申請者は致死的難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の根治的治療法の確立を、最終的な目的としている。我々は先行研究において、変異SOD1を有するALSモデルの運動ニューロン変性に小胞体ストレスが関与し、さらに抗小胞体ストレス作用を有するDerlin-1の過剰発現が変異SOD1による神経変性を抑制することをin vitroの実験系を用いて明らかにした。そこで本研究では、1.弧発性ALS患者由来のiPS細胞から分化した脊髄運動ニューロンを用いて小胞体ストレス関連マーカーを検索することにより、弧発性ALS病態における小胞体ストレスの関与を明らかにするとともに、根治的な治療法開発のため、2.ERADに関わるDerlin-1を過剰発現するアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、ミスフォールディング蛋白の小胞体蓄積を軽減し、小胞体ストレスを緩和することで運動ニューロン変性を抑制することを目的とする遺伝子治療の可能性について検討する。さらに3.弧発性ALSの運動ニューロン変性におけるDerlin-1の関与をさらに実証するために、弧発性および家族性ALS患者由来のiPS細胞から分化した脊髄運動ニューロンに、これら治療遺伝子を導入し、各種小胞体ストレス関連マーカーに及ぼす影響や細胞死に及ぼす影響を評価を行っている。
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