研究概要 |
今研究の目的は、肝細胞癌においてSide population細胞=癌幹細胞と仮定し、Side population (SP)細胞特異的なマーカーを同定することである。我々はまず、7株の肝細胞癌細胞株(HepG2, PLC/PRF/5, HuH1, HuH7, HLE, HLF, SK-Hep-1)よりSP細胞の蛋白抽出を行った。SP細胞として分離可能な細胞は6株(HepG2, PLC/PRF/5, HuH1, HuH7, HLE, HLF)であった。このうち特性の異なる4株、すなわち高分化細胞であるPLC/PRF/5とHuH1細胞と、低分化細胞株であるHLEとHLFを用いてSP細胞およびMajor polulation (MP)細胞を分離し、それぞれ蛋白抽出後、蛋白レベルでの発現分布を比較した。CBB染色で比較すると、66kDaの高さにSP細胞で発現が非常に高いバンドを確認し、すべての細胞に共通する発現パターンであった。このバンドをゲルよりカットし精製後、熊本大学病態情報解析学にて質量分析法(qTOF-MS/MS解析)で同定を試みると、可能性が高い候補としてAlbuminとTCP1の2つの蛋白が同定された。それぞれ抗体を準備し、Western法にて発現分布を確認すると、いずれもバンドの高さは一致するものの、SP細胞>>MP細胞の発現パターンとは一致せず、CBB染色結果とは異なる結果であり、同定された蛋白が目的の蛋白とは異なる可能性が考えられ、方法の見直しが必要と考えられた。また、SP細胞の幹細胞性を確認する方法として、SP細胞とMP細胞からそれぞれRNAを抽出し、癌幹細胞マーカーの発現や薬剤耐性遺伝子の発現をmRNAレベルで比較を行った。その結果、SP細胞でEpCAM,CD90,CD44が高値を示し、またABCG2(BCRP)遺伝子やABCB1(MDR1)遺伝子が高発現しており、癌幹細胞集団としてのqualityは部分的ではあるものの確認できている。
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