研究概要 |
当該年度では,SAH-BCL9_Bの効果をfnFπzoで詳細に評価することを目的として研究を行った.SAH-BCL9_BがWnt/β-catenin転写活性を抑制可能か否かをWnt特異的ルシフェラーゼアッセイを用いて検討した.SAH-BCL9_B処理によりWnt特異的転写活性が50%抑制されていた.一方,SAH-BCL9_B処理はNFκB転写活性に影響を与えなかった.さらに,SAH-BCL9_BのWntシグナル標的遺伝子に対する影響をqRT-PCRで解析した.Wntシグナルの特異的下流遺伝子として知られているAxin2,Lgr5,LEF-1,APCDD1の発現量はSAH-BCL9_B処理により有意に濃度依存性にその発現量が低下していた.次にSAH-BCL9_Bの細胞増殖抑制効果を検討した.まず,外科的に切除された大腸癌組織より大腸癌細胞のみを分離した.引き続き,免疫染色またはWestern blot法を用いてBCL9およびβ-cateninの発現を確認し,^3H-tymidineを用いてproliferation assayを行った.SAH-BCL9_Bは大腸癌細胞株同様に患者検体由来大腸癌細胞に対しても細胞増殖抑制作用を有していた.さらに,SAH-BCL9_BがVEGF発現量に変化を与えるか否かをELISA法(DuoSet, R&D Systems)で解析したところ,同発現量は有意に抑制されていた.また,浸潤能の変化に関しては2x10^5のColo320細胞をMatrigel Boyden chamber(BD Biosciences)に蒔き,chamberの膜を通過し得た細胞の数をカウントすることによって評価した.その結果,SAH-BCL9_Bは浸潤能抑制効果も有していた.最後に,pre-clinicalモデルとして確立されている大腸癌xenograftマウスモデルを用いてSAH-BCL9_Bの抗腫瘍効果を解析した.SAH-BCL9_B投与群では腫瘍サイズが有意に小さいことが確認できた.以上より,SAH-BCL9_Bは抗腫瘍薬として有用である可能性が示唆された.
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