平成24年度は、引き続き研究対象者を追加して半構成的面接法によるインタビュー調査を行い、精神科看護師にとって保護室での看護ケアの経験のもつ意味を解釈学的現象学の手法を用いて、分析し解釈した。研究対象者は、精神看護専門看護師を含む精神科看護師16名だった。精神科看護師は、保護室での看護ケアの経験をとおして、患者との対人関係のプロセスを活用しながら【患者と信頼関係を築く】、【患者の安全や安心をまもる】、【患者の生活をささえる】、【患者の回復を手助けする】、【患者の自己実現や希望をささえる】、【患者の尊厳をまもる】ということを学び、それを精神科看護実践の核としていることが示されていた。6つの精神科看護実践の核は、実際に自分自身が関与した保護室での看護場面をとおして、『生きたお手本』、『かかわりの手応え』、『自己の揺らぎ』、『振り返りの場』、『反省からの学び』、『自分の気持ちに対する気づき』、『獲得された留意』、『仲間との共存』、『先輩としての苦悩』の9つの要因が相互に絡み合いながら形成されていくことが語りのなかで示されていた。 また、長期間にわたり行動制限を受けていた患者の看護介入の特徴を明らかにすることを目的として実施した文献研究(過去5年間の事例研究36件についてのメタ統合)では、精神科看護師は〈看護チーム内の意思を統一する〉、〈患者との信頼関係の形成を意識してかかわる〉、〈視覚に訴える道具を活用する〉、〈患者と目標や課題、症状の程度を共有する〉、〈工夫をして見いだしたかかわりを用いる〉という5つの特徴が明らかとなった。 以上から、「精神科保護室の看護ケアに関する教育支援ガイドライン」では、教育を支援する者が学習者の成長過程を意識した働きかけが行うことができるように、保護室の看護ケアをとおして精神科看護師が得た学びのプロセスを示す必要性があることを確認することができた。
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