本研究は、悪性黒色腫の増殖・転移能の獲得に際して生じるsmall G蛋白 (RAS/Rho family)およびその関連蛋白のSUMO化修飾と、その分子機能におけるNACC1 (nucleus accumbens associated 1)蛋白の役割を細胞生物学的に明らかにすることをprimary end pointとした。さらに、この分子機構を基盤とした新規抗がん剤のスクリーニングシステムの構築をsecondary end pointとして研究を推進した。 NACC1の中にあるSUMO化siteのconsensus motifの内、K167のみがSUMO化修飾を受けた。このSUMO化siteは、RAC1のSIM siteに弱いながらも結合を示した。しかし、IPのみでの結合が証明されるのみで他のbinding assayでは確認できなかった。活性酸素処理や低酸素処理により、NACC1-RAC1の共局在は確認できたが、GEF活性への影響はなかった。MEKとの直接相互作用は確認できなかった。一方、RAC1のSIM siteの変異体は悪性黒色腫の浸潤転移能を抑制したが増殖能に影響を与えなかった。以上の結果より、作業仮説であるNACC1の増殖・転移能の獲得に際して生じるsmall G蛋白 の修飾は、その機能には影響を与えていない事が明らかとなった。従って、secondary end pointとしてのSUMO化阻害剤のスクリーニングシステムの開発には至らなかった。
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