研究課題
本研究は、顕著な抗MRSA、VRE活性を有するBottoromycin A2(BTMA2)をリードとした実用的な新規抗生物質の創製を目的としている。上記課題を達成するため、BTMA2の効率的固相合成法の確立((1)触媒的不斉ugi反応によるBTMA2側鎖トリペプチドの立体選択的合成、(2)固相上アミジン化、(3)12員環マクロラクタム化)、およびそれを用いた(4)BTMA2の構造活性相関研究を計画した。申請者は、初年度に上記課題(1)に取り組み、BTMA2アナログの合成を視野に入れたUgi反応による種々の側鎖トリペプチドの合成に成功した。BTMA2に含まれるα-置換-α-チアゾリルイソシアニドの立体選択的合成は、α位の高い酸性度のため、ラセミ化が進行する等容易ではなかったが、種々条件検討を行った結果、立体選択的に調製することに成功した。このことより、これまで前例のない触媒的不斉Ugi反応への展開の足がかりができた。また、BTMA2類を合成する上で鍵となる固相上アミジン化反応も検討している。2-クロロトリチルレジンにバリンを担持し、Fmoc固相合成法により、順次プロリン、グリシン、チオアミド化したt-ロイシンを縮合し、アミジン化前駆体を7段階69%収率で合成することに成功した。続いて、側鎖トリペプチドとのアミジン化を検討した。本反応において、チオアミド化したt-ロイシンのN-保護基が重要であり、カーバメート系保護基の場合は、主に側鎖トリペプチドとウレアを形成して連結した生成物が得られた。そこで、Nの保護基にPhth、Ns基を用いたところ、固相上アミジン化が進行したと示唆される結果が得られた。アミジン体は固相からの切り出し条件において不安定であったため単離出来なかったと考え、現在、塩基性条件で固相から切り出せる固相担体を検討しており、世界初の固相上アミジン化の実現が目前と成っている。
3: やや遅れている
本研究が遅れている最大の理由として、前例のない固相上アミジン化反応が挙げられる。本アミジン化反応は、側鎖トリペプチド由来の副生成物が多数確認され、単離精製が容易ではなかった。また、ペプチド化合物特有の難容性、NMRスペクトルの複雑さ、さらにはアミジン体の不安定性により、本反応の解析に当初の想定以上に時間を費やされている。
触媒的不斉Ugi反応によるBTMA2側鎖トリペプチドの立体選択的合成を目的に、キラルホスホン酸を中心とした触媒の精査、溶媒、反応温度を検討し、高いエナンチオ選択性を実現する反応条件を探索する。また同様に、未達成であるα-チアゾリルイソシアニドの本反応への適用を検討する。未だ前例のない固相上アミジン化に向け、温和な条件下、アミジン体を切り出せる固相担体を精査する。最後に12員環マクロラクタム化を検討し、BTMA2の効率的固相合成を達成する。本手法を利用し、BTMA2の構造活性相関を解明することにより、新規抗生物質を創製する。
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Chemical & Pharmaceutical Bulletin
巻: 60 ページ: 169-171
10.1248/cpb.60.169
http://seibutuyuuki.sakura.ne.jp/index.html