研究課題/領域番号 |
23890205
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 香 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60445294)
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キーワード | 糸球体上皮細胞(ポドサイト) / KLF4 / ネフリン |
研究概要 |
本年度は以下の実験結果を得た。(実験1)免疫蛍光染色を行うと、マウス正常腎組織においてKLF4はポドサイトに一致して発現しており、疾患モデル(アドリアマイシン(ADM)腎症、PAN腎症)においては発現が低下した。ヒト正常腎臓でも同様にポドサイトに限局しており、各種原発性糸球体疾患ではいずれも発現が低下していた。(実験2)ポドサイトのKLF4の機能を検討するために、Tet-onシステムを用いてポドサイト特異的にKLF4を誘導するダブルトランスジェニックマウスを作成した。ADM腎症発症後に低下していたKLF4を再誘導したところネフリン発現回復と尿アルブミンの有意な改善を認めた。一方、ヒト培養ポドサイトにKLF4を過剰発現させると、形態変化とネフリンを含む上皮マーカーの発現上昇を認めた。また蛍光標識したアルブミン透過性を検討した結果、KLF4発現は障害されたポドサイトのアルブミン透過性を抑制した。(実験3)ARB投与によるKLF4発現の変動をin vitroで検討するために、ヒト培養ポドサイトにADM添加後、各種ARBを添加するとKLF4およびネフリン蛋白発現の上昇を認めた。一方、AII添加によりKLF4、ネフリン蛋白発現は低下し、ChIP assayではAII添加後ネフリンプロモーター領域のKLF4結合の低下を認めた。In vivoの検討で、マウスにADM腎症作成後、各種ARBを投与すると、アルブミン尿の抑制と共に、糸球体ポドサイトでのKLF4、ネフリン発現の改善を認めた。 以上からKLF4はポドサイトに発現し、上皮形質の維持と尿アルブミンバリアの形成に関与していることが示唆された。またARB投与後のKLF4の発現誘導がARBの抗蛋白尿作用にも関与している可能性が初めて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画が適切であり、大きなトラブルがなかったためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、糸球体上皮細胞におけるKLF4のノックダウンによる影響を検討するため、siRNAの投与実験を行う予定である。siRNAによりKLF4をノックダウンした場合に、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)による抗尿蛋白作用がどのように影響されるかを検討したいと考えている。またKLF4がネフリン発現改善、尿アルブミン抑制に働く詳細な分子機序について、epigeneticな調節機構に注目しており、検討を進める。
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