研究課題
パーキンソン病原因遺伝子産物であるPINK1とParkinは、それぞれキナーゼとユビキチンキナーゼ活性をもち、協調して損傷を受けたミトコンドリアを選択的に除去する「ミトコンドリアの品質管理」に関わっている。しかし、PINK1とParkinのみではすべての事象を説明できず未同定の分子と制御メカニズムがあると考えられる。以前我々はPINK1結合因子PGAM5がショウジョウバエ遺伝学的解析によりPI甑1とParkinを介する分子であることを明らかにした。しかし、PGAM5はPINK1のリン酸化基質にならないことから、さらに未知の分子がPINK1の下流に存在すると考えられた。ミトコンドリア品質管理に関わる分子群を同定するため、PGAM5を安定的に強制発現できる培養細胞系統のライゼートからPGAM5に結合するタンパク質群を単離し、質量分析により網羅的に解析した。得られた結合タンパク質の結合の特性は免疫沈降法にて検討し、ParkinのE3活性に影響を与えるかウエスタンブロットにて確認し候補因子の抽出を行った。さらにショウジョウバエを用いたin vivoスクリーニングを行った。具体的にはPINK1欠失ショウジョウバエの可視化表現型(羽の姿勢制御の異常)を指標として、PINKl表現型を修飾する分子の遺伝学的スクリーニングをし、候補因子をさらに絞り込んだ。計画当時はプローブとしてPGAM5結合因子のみを解析する予定だったが、範囲を広げてミトコンドリア膜電位低下特異的にPINK1に結合する因子も含めて網羅的解析、遺伝的スクリーニングを行った。その結果、数個の遺伝子の同定に成功した。これら遺伝子の変異ショウジョウバエ、トランスジェニックショウジョウバエを作製し、運動負荷試験やドーパミン神経変性の表現型を修飾するか評価実験に着手するところである。
3: やや遅れている
本年度ではショウジョウバエの羽の表現型用いたin vivoスクリーニングで結合分子を絞り込み、その上で候補遺伝子の機能を運動機能やドーパミン神経変性などの表現型で評価する予定であったが、絞り込みまでしかできていない。計画には入れていなかったミトコンドリア膜電位低下特異的なPINK1結合因子の検討の追加が主な原因である。しかし、ミトコンドリア品質管理に関わる遺伝子群の同定・解析には必要と判断した。
PINK1-Parkinシグナル伝達に関与する候補分子の変異ショウジョウバエの作製を完成させ、そのショウジョウバエの基本表現型の解析、候補分子のPINK1-Parkinシグナルにおいての役割の解明を、遺伝学的、生化学的、細胞生物学的アプローチにより行う。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
PLoS Genetics
巻: 8 ページ: e1002537.
DOI:10.1371/journal.pgen.1002537
PLoS ONE
巻: 7 ページ: 1-13
10.1371/journal.pone.0030958