パーキンソン病原因遺伝子産物であるPINK1とParkinは、協調して損傷を受けたミトコンドリアを選択的に除去する「ミトコンドリアの品質管理」に関わっている。しかしPINK1とParkinのみではすべての事象を説明できず未同定の分子と制御メカニズムがあると考えられる。以前我々はPINK1結合因子としてPGAM5を同定したが、PINK1のリン酸化基質ではなかった。 ショウジョウバエ複眼におけるin vivoスクリーニングによりTarget of rapamysin (TOR)とPINK1、Parkin、PGAM5に遺伝的相互作用があることを明らかにした。さらにPINK1欠失ショウジョウバエの可視化表現型(羽の姿勢異常)を指標にしスクリーニングを行った結果、PINK1による表現型を修飾する因子としてTOR複合体2(TORC2)の構成因子であるRictorを同定した。 次にヒト神経芽細胞を用いてPINK1がRictorを直接リン酸化するか[32P]リン酸で代謝ラベリングを行った。抗Rictor抗体で免疫沈降しウエスタンブロット法にて解析したが、PINK1を活性化させてもRictorのリン酸化レベルに変化は無かった。次にPINK1がTORC2活性化を介してAKTのリン酸化レベルを増強する報告があることから、PINK1を活性化したときのAKTリン酸化レベルを調べた。詳細には、マウス胎児繊維芽細胞のライセートから抗Rictor抗体で免疫沈降したものに、リン酸化基質としてAKTを加えキナーゼアッセイを行った。その結果、TORC2活性化に依存してリン酸化されるAKT S473のリン酸化レベルはPINK1欠失細胞またはPINK1活性化細胞において変化は見られなかった。 ショウジョウバエin vivoスクリーニングで見つかった他の候補遺伝子は現在解析中である。
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