研究課題
チタンインプラントの表面処理では,接着細胞の酸化ストレス抑制による抗炎症作用が重要であるが,チタン表面処理の研究は骨芽細胞の増殖・分化能が重視されており,細胞内酸化ストレスとの関係は検討されていない. 金属生体材料であるチタンは緻密構造であり,通気性が無いことから,接着細胞への酸素供給ができない.このため,細胞内ミトコンドリアの呼吸抑制が生じ,過剰電子が細胞内で活性酸素を発生させるため,接着細胞の酸化ストレス抑制物質が減少すると考えられている.本研究では,チタンインプラントの化学的表面改質方法として,放電陽極酸化処理の基礎実験を行ってきた.電解液中でのチタン陽極酸化処理は,酸化膜/電解液およびチタン/酸化膜界面において同時にTi4+とe- が発生し,アモルファスのアナターゼ型チタン酸化膜を成長させる.この厚みの増加した酸化膜内にはTi4+とe- の正孔電子対が処理後も残存しており,大気中の酸素や水分と反応することで,ヒドロキシラジカルと親水基が維持される.これは大気加熱により得られたルチル型チタン酸化膜では見られない反応であった.本処理は,チタン表面で抗菌効果と生体適合性向上を同時に達成することができるだけでなく,骨芽細胞の分化能および石灰化能を著しく上昇させた.これは,単に親水性のみを向上させたチタン表面では見られない現象であり,チタン表面で発生するヒドロキシラジカルが,未知の生体反応を発現する可能性が示されたと考えられる.さらに放電陽極酸化チタン表面に接着した骨芽細胞は,ミトコンドリアの呼吸抑制がみられず,細胞内活性酸素の発生を抑制する現象がみられた.したがって,ヒドロキシラジカルを発生させる陽極酸化処理は,表面接着細胞の酸化ストレスを抑制し,創傷治癒を促進させる効果が期待される.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicine
巻: 8 ページ: 374-382
10.1016/j.nano.2011.07.001.