研究概要 |
小児の歯周疾患は主に不潔性の歯肉炎や萌出性の歯肉炎であり、骨破壊を伴う歯周炎は稀である。成人の歯周疾患をもたらす歯周病原性細菌は小児からも検出され、小児期に感染していることが報告されている。しかしながら、歯周病原性細菌の伝播と菌の定着については不明である。今年度は妊娠期・出産後の母親とその子供を対象として歯周病原性細菌の口腔内への定着時期についての解明を目的とした。まず妊娠期・出産後の母親とその子供から口腔内の歯周病原性細菌を採取するため、サンプルとして唾液を使用した。唾液を選択した理由として乳児期からのサンプル採取を行う必要があり無歯顎の時期が含まれることが要因となっている。子供のサンプルの採取時期は①新生児期(0か月)②離乳食開始前期(3,4か月)③乳切歯萌出期(6か月)④1歳児期とした。出産後の母親とその子供から継続的にサンプル採取を行っているのは現在13組であり、同一の対象者から少なくとも①から④の2期間を継続して採取することを条件とした。歯周病原性細菌の検出は、唾液中の細菌DNAの精製を行いPCR法を用いて行った。今回検出を行った歯周病原性細菌の一つであるPrevotella intermediaは、子供において無歯顎期から検出され継続して検出されるものと、継続して検出されないもの、全く検出されないものと様々であった。今回対象とした子供において、歯周病原性細菌の感染は認められるが、定着には至っていないことが示唆された。
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