本研究では、ビタミンC(以下、VC)の検知摂取機構の解明を目的として、前年度は、48時間二瓶法(蒸留水と2g/l VC水溶液)にて、VC合成能欠如ラットにおけるVC欠乏前後のVCに対する嗜好性を比較検討したが、本年度は、欠乏前後の様々な濃度(0.1、0.3、1、3、10、30及び100mM)のVC水溶液に対する嗜好性を、同様の実験方法にて計測した。その結果、1mM群では、欠乏後の嗜好性はVC摂取に伴い徐々に増加していくが、3mM群では、欠乏後数日まで増加したが、その後、欠乏前と近い値まで徐々に減少していった。10、30、100mM群では、いずれも欠乏前の嗜好性は低いが、欠乏後は増加し、VC摂取に伴い、減少していった。0.1及び0.3mM群では、欠乏後、VC水溶液を摂取するが、大部分のラットが死亡した。また、1日あたりのVC水溶液摂取量は、1及び3mM群では、欠乏時徐々に増加していくが、10mM以上の濃度群では減少する結果になった。さらに、代謝ケージを用いた実験では、欠乏状態に陥ると、飲水量、体重、摂餌量及び尿量が減少する結果となった。 次にVC欠乏時に、VC水溶液及び5基本味に対する応答は変化するのかどうか明らかにするために、欠乏状態にあるVC合成能欠如ラットとないラット及び野生型ラットを用いて鼓索神経応答解析を行った。その結果、欠乏状態のラットはVC、塩化ナトリウムや塩酸に対する応答が減少している傾向がみられた。また、VC濃度が0.3~1mM以上で応答を示すことが明らかとなった。 以上の結果から、ラットは味覚としてVCを感知し、生きていくのに必要な量を摂取しているが、VC欠乏状態に陥ると、VC及び5基本味に対する味神経レベルでの応答の一部に変化を起こし、蒸留水摂取量及び尿量を減少させ、VCに対する嗜好性を増加させ、VCの摂取行動を引き起こすことが示唆された。
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