本研究は発達初期の延髄味覚神経回路の構築についてシナプス関連タンパク質の発現を経時的に観察することにより明らかにするものであった。過去に発表された解剖学的研究から孤束核ニューロンの誕生は胎生12日が最大であること、また電気生理学的実験から遅くとも胎生16日目には求心性神経線維と吻側孤束核のニューロンはシナプス結合していることが明らかであったので、胎生13日から16日目まで孤束核内のシナプス関連タンパク質の発現を蛍光免疫組織化学により観察した。 胎生13日、孤束の走行に一致したneurofilament陽性線維が観察された。胎生14日、少数のneurofilament陽性線維が孤束から分枝して正中方向(第4脳室)に向かって伸長し始めた。Syntaxin陽性線維とbassoon陽性線維も孤束から正中方向に走行しているのが観察された。胎生15日、孤束の走行に一致したsynaptophysin陽性線維とsynaptobrevin陽性線維が明瞭に観察された。胎生16日、孤束から分枝したneurofilament陽性線維は第4脳室の縁まで到達していた。またこの線維はさらに分枝して幼若孤束核内で複雑な神経網を形成していた。幼若孤束核内でsyntaxin、bassoon、synaptophysin陽性線維も明瞭に観察されたが、抗synaptobrevin免疫反応は不明瞭であった。以上の結果から、胎生14日から16日の間に求心性線維の孤束から幼若孤束核内への伸長に伴い、まずシナプス前末端の構築に重要なsyntaxinとbassoonが求心性線維の先端に輸送され、これに遅れてシナプス小胞の形成に重要なsynaptophysinが伸長した求心性線維に発現し、延髄味覚神経回路が構築されていくことが明らかとなった。
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