研究課題
昨年度の解析によりアスベスト継続曝露細胞では転写因子FOXO1の発現が低下していることが見いだされている。FOXO1はアポトーシスの誘導や細胞周期進行を調節に関与することが報告されており、FOXO1の発現低下がアスベスト長期曝露細胞のアポトーシスの回避に関与することが予想された。そこで、平成24年度はMT-2親細胞に対してFOXO1を標的とするshRNAを発現するレンチウィルスベクターを感染したFOXO1発現低下細胞、アスベスト長期曝露MT-2細胞に対してFOXO1発現レトロウィルスベクターを感染したFOXO1発現回復細胞をそれぞれ樹立した。これらのFOXO1発現調節細胞を用いて、高濃度アスベストの短期曝露によるアポトーシス誘導実験を行ったところ、FOXO1発現低下細胞ではMT-2親細胞と比較し、わずかにアポトーシス細胞数の減少が観察された。従って高濃度アスベストによるアポトーシス誘導にFOXO1が関与することが明らかとなった。一方、アスベスト長期曝露株に対してFOXO1の発現を回復してもアポトーシス細胞数の増加は観察されないことから、アスベスト長期曝露細胞のアポトーシス回避にはFOXO1の発現低下だけでは十分ではなく、アポトーシスを抑制する他の分子機構が存在することが示された。これまでの解析によりアスベスト長期曝露細胞では、IL-10のオートクライン作用にともないアポトーシス抑制因子Bcl2の発現が増加していることを見いだしている。これらの知見から、アスベスト長期曝露細胞はFOXO1の低下やBcl2の亢進など複数のメカニズムによりアポトーシスを回避していることが考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (23件)
Environ. Health Prev. Med.
巻: 18(3) ページ: 198-204
DOI:10.1007/s12199-013-0333-y