①Epstein-Barr virus (EBV)の免疫回避機構の解析 EBVの潜伏感染からの再活性化(溶解感染)は予後不良の疾患群の病変部組織で誘導されるが、EBV関連リンパ増殖症の多くは再活性化過程が途中で阻止されるためウイルス粒子として産生されない.これは強い抗原性をもつ溶解感染関連蛋白に対する細胞傷害性T細胞(CTL)が病変部に浸潤してくることが一つの要因である.また、CTL浸潤に関連したサイトカインにより伝染性単核症類似の全身症状を引き起こす.潜伏感染の維持に関して、LMP-1発現のon/offを同一個体の中で調節されており、宿主免疫に認識されにくいメカニズムを形成している. ②単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の免疫回避機構の解析 HSV感染によりATMとH2AXのリン酸化が惹起され、二本鎖DNA損傷(DSBs)シグナルが誘導される.このシグナルがHSV複製に必要であるが、途中でDSBsシグナルが阻害されるためアポトーシスに至らない.VZV感染では効率的なウイルス複製を得るためにDSBsシグナルの誘導自体を阻害し、アポトーシスを抑制する.病変部におけるCTL浸潤の程度は宿主免疫状態と比例することが判明し、遺伝子発現解析で、免疫不全者はアポトーシスの機構不全(特にBax/Bcl-2・Fas/FasL)をきたす. つまり、HSV、 VZVはウイルス複製を効率よく行うために、ウイルス粒子を産生するまではアポトーシスを起こさないようにDSBsシグナルをうまく調節している.免疫不全状態では、アポトーシス誘導因子およびCTL関連細胞傷害性分子の発現低下により病変の拡大や難治性をきたす.
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