歯根膜におけるオキシタラン線維は、歯根膜を縦走し、歯根膜組織の機能維持に寄与していると考えられている。これまで我々は、細胞伸展装置を用いたヒト歯根膜線維芽細胞の細胞培養実験で、オキシタラン線維束が凝集し生体のオキシタラン線維の直径に近似する条件を確立した。しかし細胞長軸とオキシタラン線維との位置関係の詳細は不明である。そこで、オキシタラン線維の走行とヒト歯根膜線維芽細胞との関係を検討した。資料および方法として、ヒト歯根膜線維芽細胞を培養し、細胞伸展装置にて伸展刺激を線維芽細胞に付与(対照群:伸展率 0%、実験群:伸展率 5%)し、細胞骨格アクチン(phalloidin 抗体)とオキシタラン線維(fibrillin-1 抗体)の二重蛍光免疫染色を行って蛍光顕微鏡で観察した。その後、画像解析ソフトウェアを用いて、細胞長軸とオキシタラン線維の走行との平均的角度の解析を行った。その結果、二重蛍光免疫染色により、対照群では、線維芽細胞上のオキシタラン線維は細胞長軸と直行する傾向がみられ、実験群では、細胞が再配列し、また凝集したオキシタラン線維束は生体のオキシタラン線維の直径に近似し細胞長軸と直行する傾向がみられた。画像解析ソフトウェアを用いたアングル解析からも、オキシタラン線維の走行は細胞長軸とほぼ直行することが明らかとなった。以上のことから、メカニカルストレス付与により、オキシタラン線維が凝集し、線維束が細胞長軸にほぼ直交することが明らかとなった。伸展力により細胞が再配列しオキシタラン線維が細胞長軸と直交することは、オキシタラン線維が外力に対して線維束の太さを増大させるだけでなく、ある方向性をもって凝集することを示していると考えられ、これは生体における歯根膜組織の機能維持に関連していることが示唆された。
|