【研究目的】有職糖尿病患者を対象に、セルフケアの実態および仕事とセルフケアの両立のために患者自身が編み出す行動を明らかにし、その行動の患者教育における活用性について検討した。 【研究方法】計画では、質問紙調査の対象者から20名を選択し、インタビュー調査を実施する予定であったが、パイロットスタディーを実施した結果、対象者全員の質的データが必要だと考え研究方法を変更した。 有職2型糖尿病患者に質問紙調査および短時間のインタビュー調査を実施した。質問紙は糖尿病問題領域質問票日本語版(石井1999、以下PAID)による負担感情、セルフケア行動評価尺度(大徳2006)による食事・運動・薬物に関するセルフケア、負担感については自作の質問を追加した。インタビューは、仕事と糖尿病管理の両立における困難とその対処(口述回答を研究者が書きとることによるデータ化)とした。 分析は、量的データには、記述統計、下位グループ分析を適用した。質的データは、「仕事とセルフケアの両立に伴う困難とその対処」について抽出したものをカテゴリー化した。カテゴリー化されたものの意味を量的データと合わせて分析を行なった。 【結果】対象者は男性61名、女性20名の合計81名、平均年齢は53.1±10.2、平均HbA1c(NGSP)は7.4±1.0、平均PAID得点は39.4±13.8であった。セルフケアの実施状況は、薬物療法に比べ食事・運動療法の実施日数が少なかった。また、最も実施困難なものは運動療法であると返答する割合が45.9%と高かった。仕事とセルフケアの両立における困難は、「食事会の際の食事療法」「食事時間のずれ」「運動が出来ない」「仕事によるストレス」「仕事中の薬物療法」であった。また、それらの困難に対し、さまざまな工夫をしている様子も明らかになり、患者教育に活用出来る内容であった。
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