研究課題/領域番号 |
23890250
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
菅原 裕子 独立行政法人理化学研究所, 精神疾患動態研究チーム, 研究員 (90610692)
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キーワード | 双極性障害 / セロトニントランスポーター / DNAメチル化 / 一卵性双生児 / 死後脳 |
研究概要 |
双極性障害では、一卵性双生児における発症一致率は高いが100%ではなく、エピジェネティック要因の関与が考えられる。我々は、一卵性双生児双極性障害不一致例の培養リンパ芽球由来DNAを用いてエピゲノム解析を行った結果、セロトニントランスポーター遺伝子(SLC6A4)のDNAメチル化差異を見出した。 一卵性双生児におけるDNAメチル化差異の基盤として、ゲノム差異が存在するかどうかについての確認を行うため、Agilent社製CNVアレイを用いてコピー数差異の探索を行った結果、SLC6A4のメチル化差異ならびに表現型不一致に関連するゲノム差異は同定されなかった。 不一致双生児におけるSLC6A4メチル化差異の病態生理学的意義について検討するため、健常者ならびに双極性障害患者双生児の培養リンパ芽球由来DNAにおいて、Pyrosequencerを用いてSLC6A4のメチル化状態を調べた結果、SLC6A4のメチル化は双極性障害患者で有意に高いことが確認された。また、SLC6A4の上流にあるHTTLPR多型、SLC6A4の遺伝子発現を調べたところ、S/S遺伝子型においてのみ双極性障害患者で発現量は有意に低く、メチル化は有意に高いという結果であった。また、S/S型においてのみSLC6A4のメチル化と発現量に有意に相関が認められた。さらに、健常者ならびに双極性障害患者の前頭葉から抽出したDNAにおいて、同様にPysrosequencerを用いてSLC6A4のメチル化状態を調べた結果、双極性障害患者における高メチル化が確認された。これらのことから、SLC6A4のメチル化は双極性障害の発症に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施予定であった実験内容を終了した。
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今後の研究の推進方策 |
一卵性双生児双極性障害不一致例から樹立したリンパ芽球細胞株から抽出したDNAを用いて、Agilent社製SureSelectキットでエクソン配列を濃縮した後、Illumina社の次世代シークエンサーを用いて配列解析を行う。双生児間差異の検出に焦点をあててデータ解析を行い、双生児間差異が認められた領域に関してサンガー法によるシークエンス用いて確認実験を行い、確認できた差異に関しては末梢血由来DNAあるいは唾液由来DNAを用いて同様に確認実験を行う。培養細胞として、神経系培養細胞(SH-SY5Y)およびS/S型およびL/L型の被験者由来の培養リンパ芽球を用いて、ここに抗うつ薬を加えて培養する。培養細胞よりDNAを抽出し、Pyrosequencerを用いてDNAメチル化解析を行う。
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