研究概要 |
rasは腫瘍全体の約3分の1で活性化変異が認められている最も普遍的な癌遺伝子であり、その産物である低分子量Gタンパク質Rasは抗腫瘍薬開発上、最も有効な分子標的の一つと考えられる。本研究課題では、Specific and No-genetic IAP-dependent Protein eraser(SNIPER)を用いたプロテインノックダウン法によって、癌細胞中の活性型Rasタンパク質を特異的に標的し、分解に導くための基盤技術を開発することを第一の目的とするため、活性型Rasに特異的に結合するリガンドの同定が必須である。これまで、種々の低分子化合物等がRasに結合することが報告されており(PNAS 109, 5299、Bioorg Med Chem Lett. 19, 4217他)、これらをリガンドとして利用できる可能性が示唆された。これらのリガンド候補をビオチン標識し、in vitro pull-down assayを行い実際にRasに結合する活性があるかどうかを検証した。そのうち、phage displayによって同定された特定の配列のペプチド(Chem Bio Chem 11, 517)や、特定の化合物(Biooreg Med Chem 5, 817)が実際にRasと結合することが確認できた。また、独自の手法でRasに強く結合するペプチド性のリガンドも一件同定している。これらのRasに結合する活性を有している化合物についてはSNIPERを作製し(一部はSNIPER化を完了している)、細胞内でRasを分解することが出来るかを検証する予定である。
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