研究概要 |
B型慢性肝炎の持続的な感染により肝臓の線維化が進展するが,その機序は不明のままである.申請者らは,ヒト肝細胞置換キメラマウスを利用することでB型肝炎ウイルス(HBV)感染を起因とする線維化モデルを確立した.本研究では,これまでの結果から推測された活性酸素種(ROS)とToll-like receptor4(TLR4)を中心に,その上流と下流経路を解析することで,線維化の発症と進展の機序を明らかとしていく. 本年度では,市販の抗TLR4抗体と共同研究により取得した抗TLR4抗体を用いてTLR4の中和により本経路の阻害試験を行った.その結果,市販の抗TLR4抗体では,十分な阻害を得ることが出来ずに,LPS刺激等でTNF-alphaやNK-k Bの産生を誘導する結果となった.一方で,我々で取得した抗TLR4抗体ではin vitroとin vivoでの予備試験でTLR4経路の阻害が確認でき,マウスでの毒性も低いことがわかった.引き続いてこの抗体を利用したin vivo試験を行う準備を進め,HBV感染後に毎週本抗体を投与し続けることで線維化の抑制が行われるか検討を続けた.試験期間は6ヶ月を予定しており,飼育終了が3月末の予定である. 来年度以降で組織の病理学的解析,血液中のサイトカイン量の測定,肝臓での線維化関連遺伝子の発現プロファイルを確認していく.特に,線維化形成過程で観察される肝細胞の多核化についても解析を進め,前癌病変の出現機構についての分子生物学的な解析を進める.
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今後の研究の推進方策 |
キメラマウスから得られた肝臓の凍結組織やパラフィンブロックを病理染色もしくはDNA,蛋白を抽出した上で分子生物学的な解析を進める.特に,抗TLR4抗体が線維化の予防に効果があるか否かが重要な点であるため,このTLR4経路の阻害が線維化と関連しているかを線維化マーカー遺伝子を定量することで行なっていく.これらの系は既報の論文で確立しており,予定通りに進むものと推察される。
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