筋原線維性ミオパチー(MFM)は、筋原線維配列の強い乱れと筋線維内でのタンパク質の蓄積を主病変とする筋疾患群で、サルコメアのZ線関連タンパク質の異常によることが示唆されているが、その約80%は原因不明である。我々は、HSP/HSC70のコシャペロンとして働き、サルコメアZ線の構造維持に重要な働きをすると考えられているBAG3において認められたヘテロ接合型の新規変異である、780番目から794番目までの塩基の欠失変異(c.780-c.794del)について、トランスジェニックメダカを作成することによりその変異が病因となっているかを検討した。 変異型BAG3を導入したトランスジェニックメダカにおいては、顕著な体の彎曲が認められ、それに伴い、運動能が失われていた。当該魚では、筋線維の萎縮を伴う大小不同が認められ、ヒトにおけるミオパチーに対応する表現型を呈していると考えられた。さらに筋原線維内において変異型BAG3はfilamin CやdesminといったZ線関連タンパク質と共に蓄積していた。また、当該魚の電子顕微鏡観察を行った結果、Z線の拡張を伴う構造異常が認められた。これらの表現型はMFM患者生検筋において認められる所見とよく合致していることから、c.780-c.794delの変異はMFMの責任変異であると考えられる。本研究では、多産で世代交代が早く、体が透明なメダカを用いることにより、個体レベルでの変異タンパク質の影響を検討することができた。トランスジェニックメダカは、MFMのみではなく多くの優性変異型の筋疾患研究において、変異の病因性の検定や病態モデルとして有用であると考えられる。
|