研究課題
本研究課題は、日本人の自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder:ASD)児における聴覚性驚愕反射(Acoustic Startle Response:ASR)のプロファイルを評価し、それにより、精神疾患のトランスレーショナル・リサーチにおいて有用な中間表現型と考えられているプレパルス・インヒビション(prepulse inhibition:PPI)を日本人ASD児において適切に評価できるASR検査パラダイムの同定を目的とする。日本人児童のASD群3名(9.7±2.1歳)ならびに定型発達(Typical Development:TD)対照群13名(10.3±1.5歳)を対象に、前刺激(プレパルス)を用いない驚愕刺激のみのASR検査を行った。ASR検査を実施中に脳波の同時測定も行った。日本人ASD児のASRは、70msec以上に潜時が延長し、また閾値は低下しており、従来プレパルスで用いられてきた65~70dB程度の音圧でもASRが誘発される可能性が示唆された。延長された潜時は、社会認知機能の障害と、微弱な刺激に対する反応の大きさは、向社会的行動の減少と関連した。さらに、驚愕反射誘発時の脳部位の賦活パターンの非定型性が、ASD児のASRのプロフィールに関連している可能性も考えられた。ASRの指標は、ASDの非定型性に関連した有用な神経生理学的指標である可能性が示唆された。ただし、ASDではASRの閾値が低下し、さらに潜時は延長しているため、プレパルスの音圧は従来よりも小さな音圧で設定し、また、プレパルスとパルスとの間の間隔も十分に設定する必要が考えられた。児童のASD群においてPPIを評価するためには、これらの条件を考慮し、さらにASRの閾値も評価できる聴覚性驚愕反射検査パラダイムが必要であると考えられた。
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DOI:10.1016/j.neures.2011.10.009
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