【目的】抗HIV薬は95%以上の服薬率を継続する必要がある薬剤であり、薬剤師による服薬指導は一方的なおしつけでなく、患者の立場に立った指導が求められている。学生時代に毎日の服薬を体験学習することにより患者の立場にたった薬剤師が養成できると考える。 【方法】平成23年度薬学部長期実習生30名に対し、HIVについての講義を行った。その中で、ガイドラインの推奨薬剤の用法、用量、副作用、注意点を解説後、服薬体験を行う処方内容(薬剤と服用時間)を学生自身が設定し、自動服薬記録瓶(Medication Event Monitoring System:MEMSボトル)を用い、2週間体験学習を行った。なお、8日目に薬剤師が服薬状況を確認し、学生とともに後半1週間の服薬率を上げるための対策をたてた。MEMSボトルは蓋をあけると日時がチップに記録され、その情報をリーダーで読み取ることにより自身の服薬状況を客観的に観察することができるシステムである。 【結果】講義前に実施したアンケートでは、「抗HIV療法の成否には服薬指導が重要である」と回答した学生は32.3%とそれほど高いものではなかった。服薬体験については、薬剤師介入前の前半1週間の服薬率は89.6(28.6-100)%、介入後の後半1週間の服薬率は94.5(71.4-100)%であった。服薬体験後に学生にとったアンケートでは、「毎日同じ時刻に服用する困難さがわかった」96.7%、「自分の生活に合わせて服薬時間を設定することはアドビアランス確保の上で重要である」76.7%との回答が得られた。 【考察】学生は長期実習開始時、「患者は医師の指示通り服薬するのは当然」と考えていたようであったが、この体験学習で、継続服用の困難さに気づいており、今後、患者の立場にたった服薬指導が行えることが期待される。また、後半の1週間の服薬率が前半の1週間より改善したことは、薬剤師による介入が有効であり、実臨床においても服薬中の患者に対する定期的な薬剤師の介入が重要であると考えられた。
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