研究概要 |
【研究目的】高カロリー輸液をクリーンベンチで調製後、臨床的にどの程度の時間まで微生物学的安全性が担保されるかを検証し、臨床使用に適する保存時間を明らかにすることを目的として検討を行った。 【研究方法】クリーンベンチを用いて通常の手順で高カロリー輸液に注射シリンジで微量元素製剤を注入した。良く混合した後に刺入部をアルコール綿で清拭し、電子滅菌済シールで密封し、冷蔵庫内で4℃にて保存した。保存開始後24、48、72時間後にクリーンベンチ内で無菌的に注射シリンジを用いてサンプル1mLを抜き取り、標準培地20mLを混合、混釈平板法で35℃、5日間培養後、菌発育の有無を観察した。菌の発育が認められた場合、そのサンプルは微生物学的に使用が不適であると判断する。陽性対照として通常環境室内に開放条件下で24時間経過後の非滅菌蒸留水、陰性対照として注射用水1mLをそれぞれ用いた。 【研究成果】クリーンベンチにて混合調製を行った全ての高カロリー輸液において、各時間保存したサンプルで菌の発育は全く認められなかった。陰性対照も同様の結果であった。一方で陽性対照は全例において菌の発育が認められた。陽性対照には室内の雑菌類が存在しているものと考えられ、クリーンベンチの使用によってその混入を防止出来たと考えられる。また、隔壁開通したフルカリック輸液の冷蔵保存期限は72時間とされており、今回の結果はクリーンベンチを用いることにより微生物学的にも冷蔵保存期限まで安全性が保たれていることが示された。この結果より週末に休日投与予定の高カロリー輸液の調製、保存をすることも可能であると考えられる。病棟で高カロリー輸液を調製した場合14.7%に好気性菌が検出されたとの報告^<1)>もあり、原則としてクリーンベンチを用いた調製を行い細菌混入のリスクを回避するべきであることが明らかとなった。 1)橋本守ら,日本農村医学雑誌,1993
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