【研究目的】 抗がん薬の一つであるCyclophosphamide(CPA)が海外において、医療従事者の尿中から検出されたとの報告があり、日本でも同様の報告がされている。海外の研究結果と比較すると同程度の汚染があったことが示唆されており、CPA製剤の調製時の曝露、特に揮発の危険性が懸念されている。これまで揮発していることを示唆する報告はされているが、抗がん薬調製時における揮発量に関して詳細に検討されていなかった。そこでCPAの揮発量を測定し抗がん薬調製時の安全対策に役立てることを目的とした。 【研究方法】 臨床現場で使用されている医療用のCPAを用いて研究を行った。がん化学療法施行時にはCPAを生理食塩液にて20mg/mLの濃度に調製することから、同濃度のCPA標準液を調製した。CPA標準液3mLを開放型バイヤルに入れ、そのバイヤルと捕集紙と共に100mLのプラボトルへ密閉した。常温にて72時間経過後、バイヤルを回収し捕集紙および100mLプラボトル内部に吸着したCPAをメタノールにて抽出し、LC/MS/MS法にて定量した。またアルコール噴霧条件下を再現するため、無水エタノール2mLを捕集液へ吸収させ、同様の実験系にてCPAの定量を行った。 【研究成果】 揮発量を測定した結果、92ngのCPAが検出された。検出量についてはごくわずかであるが、連日抗がん薬調製することも考えると継続的な吸入には注意が必要である。またアルコールを使用した場合、780ngのCPAが検出された。アルコールがCPAの揮発を助長していることが考えられるため、アルコールの使用は制限するべきである。CPAの揮発量は非常に少ないが、CPA調製時にはクローズドシステムを用いた安全対策を講じる必要がある。
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