カルボプラチン投与中に発症するアナフィラキシーは、予測困難であり、時に呼吸器症状や循環器症状を伴う重篤なケースもみられることから、臨床上問題となっている。これまでに皮内反応テストの有用性が報告されているが、抗がん剤の被曝防止の観点から臨床応用が困難であり、予測性の高い安全な検出法の開発が切望されている。これまでの研究結果より、カルボプラチンの過敏症患者では、好塩基球の型酵素であるCD203cの発現量が未発症者に比べ有意に高く、さらに、少数例の検討(n=5)では、カルボプラチン投与前の血液検体からグレード2以上の過敏症が予測可能であった。本研究では、症例数を追加し、CD203cを指標としたカルボプラチン過敏症のin vitro予測系を検証し、実用化に向けた検討を行った。 これまでに過敏症未発症者10名をエントリーし、そのうち8名について経時的にCD203cの発現量を測定した。過敏症を発症していない9名の22検体については、いずれの測定結果もCD203cの活性化率>6.0%、ΔMFI>10であり好塩基球の活性化はみられなかった。また、経過観察中にグレード1のアナフィラキシーを発症した1名(2検体)についても同様に陰性の結果であった。グレード4のアナフィラキシーの既往を持つ患者については、CD203cの活性化率が19.9%、ΔMFIが17.4と顕著に上昇しており、好塩基球の活性化が確認された。さらに、この患者のサンプルを用いて、PI3-Kの阻害剤であるWortmanninによる効果を検討したところ、CD203cの活性化がほぼ消失したことから、この1名については、カルボプラチンの過敏症はIgEを介する免疫機序が関わることが示唆された。 以上より、これまでのデータの再現性が確認され、さらに発症機序についてもIgEを介した免疫機序の関連性を示唆する有益な情報が得られた。
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