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2023 年度 実績報告書

古代アンデスのワリ帝国の社会構成と地方社会の実態

研究課題

研究課題/領域番号 23H00032
研究機関南山大学

研究代表者

渡部 森哉  南山大学, 人文学部, 教授 (00434605)

研究分担者 長岡 朋人  青森公立大学, 経営経済学部, 准教授 (20360216)
澤藤 りかい  総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 日本学術振興会特別研究員(CPD) (50814612)
蔦谷 匠  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (80758813)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワードアンデス / ワリ / 土器 / 人骨 / DNA
研究実績の概要

研究代表者は2023年7月から9月にかけてペルー北部高地に位置するワリ帝国期の遺跡テルレン=ラ・ボンバの第三次発掘調査を実施した。ワリ帝国はペルー中央高地南部に位置するワリを首都として、後8-10世紀に台頭した帝国である。その勢力範囲は北は現在のペルー北部山地のカハマルカ地方、南はクスコ地方に及ぶと考えられている。カハマルカ地方に位置するエル・パラシオ遺跡がワリ帝国の行政センターであったと考えられている。しかしながら、その西側のペルー北海岸にどのように進出したのかは不明瞭であったため、北海岸と北高地を結ぶルート上にあるテルレン=ラ・ボンバ遺跡の発掘調査を実施した。
2023年の発掘調査では壁龕を伴う地下式の墓室の上にチュルパと呼ばれる地上式の塔状墳墓が乗る二層構造の墓が1基、地下式の墓室の上に部屋が乗る構造物が1基検出された。土器はカハマルカ文化の土器、海岸カハマルカ様式の土器、チムー様式の土器、シカン様式の土器などが混在して出土した。つまり主体となる土器が不明瞭であり、この遺跡の性格を解釈することが難しい要因となっている。人骨にも多様性が認められるかを今後検討する。ワリ帝国のの支配下で複数の土器が混在することが可能であったとすれば、帝国の崩壊とともにこの場が放棄され、争いが引き起こされたと考えられる。
分担者の長岡はクントゥルワシで古人骨の形態学的調査を行った。生物考古学の現状に関する総説論文の執筆を行った。澤藤はエル・パラシオ遺跡から得られた5個体の歯石DNAについて、ショットガンシーケンスを行いどのような動植物・バクテリアが含まれているか分析した。蔦谷は既存の機器が故障し廃棄となったため、新規に濃縮遠心機を導入し、タンパク質の前処理を実施できる体制を整えた。歯石のプロテオーム解析のために日本国内の古歯石を利用して条件検討を実施し、成果を論文化した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定通りテルレン=ラ・ボンバ遺跡の第3次発掘調査を実施した。また歯石DNAの分析の結果、主に口腔細菌が多く含まれており、特に1個体からは齲歯に関わるStreptococcus mutansが多く検出されたほか、歯周病に強く関わるred complexのPorphyromonas gingivalis, Tannerella forsythia, Treponema denticolaがほぼ全ての個体から得られた。また動植物ではヒトとコカ属(Erythroxylum)のDNAが検出され、その個体のヒトDNAと当時口にしていたものが復元された。土壌DNAに関しては、日本やチェコの遺跡で解析を行い、その有効性を確かめた。

今後の研究の推進方策

2024年度にはテルレン=ラ・ボンバ遺跡の第3次発掘調査の出土遺物、人骨の分析を行う。また2025年度に発掘調査を行う遺跡の図面作成を行う。人骨資料の日本への持ち出し手続きを行い、日本において安定同位体分析および古代プロテオーム解析を実施予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Palaeoproteomic investigation of an ancient human skeleton with abnormal deposition of dental calculus2024

    • 著者名/発表者名
      Uchida-Fukuhara Yoko、Shimamura Shigeru、Sawafuji Rikai、Nishiuchi Takumi、Yoneda Minoru、Ishida Hajime、Matsumura Hirofumi、Tsutaya Takumi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 14 ページ: 5938

    • DOI

      10.1038/s41598-024-55779-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Historical overview and challenges in the development of bioarchaeology in Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Nagaoka Tomohito
    • 雑誌名

      Frontiers in Earth Science

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.3389/feart.2023.1137696

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 江戸時代人骨のライフヒストリー復元―生物考古学創生―2023

    • 著者名/発表者名
      長岡朋人
    • 雑誌名

      関西近世考古学

      巻: 29 ページ: 3-10

  • [雑誌論文] 日本における産業化と都市化が健康に与えた影響―生物考古学の視点―2023

    • 著者名/発表者名
      長岡朋人
    • 雑誌名

      季刊考古学

      巻: 別冊44 ページ: 51-57

  • [雑誌論文] 感染症学と古代ゲノム学の接点:古人骨研究の視点2023

    • 著者名/発表者名
      長岡朋人
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 286 ページ: 255-258

  • [雑誌論文] Perspectives and Future Developments Within Sedimentary DNA Research2023

    • 著者名/発表者名
      Holman Luke E.、Wang Yi、Sawafuji Rikai、Epp Laura S.、Bohmann Kristine、Pedersen Mikkel Winther
    • 雑誌名

      Tracking Environmental Change Using Lake Sediments: Volume 6: Sedimentary DNA

      巻: - ページ: 393~416

    • DOI

      10.1007/978-3-031-43799-1_13

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Early Pastoralism in Central European Forests: Insights from Ancient Environmental Genomics2023

    • 著者名/発表者名
      Zampirolo Giulia、Holman Luke E.、Sawafuji Rikai、Pt?kov? Michaela、Kova?ikov? Lenka、??da Petr、Pokorn? Petr、Pedersen Mikkel Winther、Walls Matthew
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2023.12.01.569562

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 古代アメリカに関する中学・高校教科書問題 中学歴史と高校歴史総合・世界史探究の検討2023

    • 著者名/発表者名
      青山和夫・井上幸孝・吉田晃章・渡部森哉・松本雄一
    • 雑誌名

      古代アメリカ

      巻: 26 ページ: 93-108

    • 査読あり
  • [学会発表] Segunda temporada de investigaciones en el sitio Terlé;n-La Bomba, valle medio de Jequetepeque, norte del Perú2023

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, Shinya, Jorge Luis Ruiz Barcellos, and Juan Ugaz
    • 学会等名
      X Congreso Nacional de Arqueología
    • 国際学会
  • [学会発表] ワリ期に何が起こっていたのか? ペルー北部の事例より2023

    • 著者名/発表者名
      渡部森哉
    • 学会等名
      古代アメリカ学会第28回研究大会
  • [学会発表] 古代アメリカの教科書問題 中学歴史と高校歴史総合・世界史探究の改善を目指して2023

    • 著者名/発表者名
      青山和夫, 井上幸孝, 吉田晃章, 渡部森哉, 松本雄一
    • 学会等名
      古代アメリカ学会第28回研究大会
  • [図書] インカ帝国 歴史と構造2024

    • 著者名/発表者名
      渡部森哉
    • 総ページ数
      389
    • 出版者
      中央公論新社
    • ISBN
      978-4-12-110150-1

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公開日: 2024-12-25  

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