研究課題/領域番号 |
23H00041
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岸川 毅 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (60286755)
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研究分担者 |
清水 達也 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 研究センター長 (00450510)
浦部 浩之 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (30306477)
谷 洋之 上智大学, 外国語学部, 教授 (40278213)
Neves MauroJr 上智大学, 外国語学部, 教授 (40286753)
舛方 周一郎 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (40734538)
子安 昭子 上智大学, 外国語学部, 教授 (50296943)
松田 康博 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (50511482)
園田 節子 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60367133)
村上 勇介 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (70290921)
長村 裕佳子 独立行政法人国際協力機構(緒方貞子平和開発研究所), 緒方貞子平和開発研究所, 研究員 (70868009)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 地域間関係 / ラテンアメリカ / 東アジア / 太平洋圏 / 貿易 / 外交 / 華僑華人 / 日系移民 |
研究実績の概要 |
本計画が解明を目指す5つの課題(①東アジア諸国の経済進出とラテンアメリカ諸国の政策対応、②東アジア諸国の外交政策とラテンアメリカ諸国、③ラテンアメリの対東アジア認識、 ④地域間の人の移動と移民コミュニティ、⑤東アジア文化の受容)について、文献収集と海外調査(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、チリ、ドミニカ共和国、台湾)を行った。 複数のメンバーが個別・合同調査を織り交ぜて実施したブラジル調査(舛方、子安、長村、園田、浦部、岸川)では、同国を専門とするメンバーが訪問先を調整し、複数言語で聞き取りを行い(ポルトガル語、日本語、中国語、台湾語、英語)互いに通訳するなど連携を図った。諸課題の調査内容をメンバー間で共有したことで共同調査は充実したものとなった。メキシコ調査(谷、岸川、舛方)もメンバー間で連携しながら実施した。ブラジルとメキシコには当初より研究協力拠点を築くことを目指しているため、メキシコシティ、グアダラハラ、サンパウロの重要研究機関(メキシコ国立自治大学・中国メキシコ研究センター、環太平洋圏研究所、ジェトゥリオ・ヴァルガス財団)の訪問や会合に多数のメンバーが参加して交流を図った。その他ベネズエラ(浦部)、チリ(浦部)、アルゼンチン(岸川)、ドミニカ共和国(岸川)、台湾(松田、園田)で個別の現地調査を実施した。台湾では現地のラテンアメリカ研究者と今後の協力について協議した。加えて、本課題は政策提言も目指すため、現地の在外公館、JETRO現地事務所、企業団体など外交・ビジネスの実務家やジャーナリストとの情報交換も積極的に進めた。 また今年度は、公開講座やシンポジウムの形で調査対象国の情勢分析を発表したことに加え、メンバーの多くが各国情勢に関する論考・記事執筆の依頼を受け、学会や国際会議での発表・講演等、研究成果を発信する機会を多く得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本計画は申請時よりメンバーと周到に事前準備を進めていたことに加え、研究課題への社会的関心が高まったこともあり、当初予定していた資料収集と現地調査にとどまらず、初年度から積極的に各種の成果発信を行った。 第1に、本計画の対象国の政治・経済・社会状況について概括的な分析を提示する機会を得た。南米諸国の今日の内政と対外関係に関して、上智大学イベロアメリカ研究所が連続講演会(2003年6月)を開催し、そこで舛方、浦部、大場(研究協力者)が、近年増加しつつある左派政権成立の背景、政権運営、対米・対中関係を分析し、岸川が司会・討論を務めて内政と対外関係の連関を議論した。 第2に、日本や中国など東アジアとの歴史的関係が深いペルーに関して、メンバーの研究蓄積を踏まえた成果を発信した。上智大学イベロアメリカ研究所との共催で開催された「日本ペルー修好150年記念シンポジウム:太平洋をつなぐ過去と未来」(2023年12月)では、谷の総合司会のもと、村上(日本・ペルーの外交関係、清水(日本・ペルーの経済関係)、園田(ペルーの華僑華人社会)が講演を行い、岸川の司会で、東アジアの複数の国家が関係を強めつつある今日のペルーの状況について公開の場で議論を進めた。 第3に、本計画の開始時より、中国のラテンアメリカ進出に関連して注目される政治の動き(ブラジルでの左派政権誕生に伴う対中接近、台湾・ホンジュラスの断交、台湾国交国パラグアイとグアテマラでの大統領選挙、中国によるキューバでの諜報施設建設の報道等)が相次いだことから、岸川、舛方、子安、松田など本課題のメンバーに論考・解説執筆やインタビュー等多数の要請があり、見解を発信する機会を多く得た。 研究実績の項目で述べたとおり、海外調査と拠点作りも順調であったが、成果発信においては当初の想定以上に活発な活動を展開できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、5課題について、各メンバーの担当に沿って資料収集と海外調査を進める。 海外調査に関して次年度は、研究拠点として下地のできつつあるメキシコやブラジルでの調査を継続するとともに、アンデス諸国(チリ、ペルー、エクアドル)に重点を置いて現地調査を実施する。とりわけ経済界を中心にアジア太平洋への関心が高く、近年東アジア系コミュニティが形成されているチリでの現地調査と研究交流を進めて拠点化を図る。すでに同国を専門とするメンバー(浦部)が現地の大学や研究機関との調整を進めている。またペルーに関して、今年度実施した「日本ペルー修好150年記念シンポジウム」の成果を『イベロアメリカ研究』の特集号として出版する(村上、清水、園田が執筆予定)。さらに、近年中台の外交競争で国際政治上の重要性が増し、華僑華人について研究上の進展もみられる中米・カリブ地域の調査を強化し、成果を発信する(学会報告を予定)。その際、類似した国際環境に置かれている太平洋島嶼地域などとの比較も視野に入れる。台湾での資料収集や聞き取りも継続する。 調査課題に関して、次年度はラテンアメリカにおける東アジアのポップカルチャーの受容など文化領域の調査を強化する。今年度の調査で浮かび上がった一つの論点は、韓国の文化が積極的に受容されていることであった。そこで、これまで調査してきた華僑華人コミュニティの状況や日本文化の受容に加え、韓国人コミュニティや韓国文化の受容にも射程を広げたい。 なお、調査予定国には政情が流動的な国が含まれるため、現地情勢をみながら調査地の変更や調査の延期を柔軟に行う。
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