研究課題/領域番号 |
23H00184
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
斗内 政吉 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (40207593)
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研究分担者 |
谷川 智之 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90633537)
芹田 和則 大阪大学, 経営企画オフィス, 准教授 (00748014)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | テラヘルツ放射分光 / テラヘルツ放射顕微鏡 / 半導体工程検査技術 / ナノ領域電荷ダイナミクス / 2光子励起と深さ方向分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、テラヘルツ放射分光・イメージング法(LTEM)を用いて、ウェファスケールの表面・深部分析からナノ・立体デバイス/ワイドギャップ半導体に及ぶ半導体R&D分析に、新しいテストソリューションを提供するため、局所場における光テラヘルツ波変換の物理現象を総合的に科学し、それらに資するシステム開発から有用性を明かにするもので、様々な半導体製造工程で利用できる新規の分析手法提供するものである。 その目的を達成するために、光電荷生成後の電荷移動を科学し、テラヘルツ電磁波の励起と伝搬を総合的に理解・観測するプラットフォームを構築する.その目的にために1‐4の課題を設け、本年度は以下の実績を得ている。 課題1(時間領域光テラヘルツ波変換総合モデリング)については、ナノチューブ半導体における光テラヘルツ波変換を科学し、ナノチューブ内の電荷ダイナミクスを明らかにした。またテラヘルツ波放射の観測から、MIS構造におけるフラットバンド電圧の非接触評価が可能であることを理論的に証明した。 課題2(ウェファ検査技術開拓)については、Siウェファー上のヘテロ接合の評価に利用できることを、グラフェン/Siヘテロ接合を用いて証明した。 課題3(深さ方向分析手法の開拓と応用)については、2光子フォトルミネッセンス(PL)とLTEMを組み合わせるために、CCDカメラを購入し、PL計測システムを構築した。また、超格子を埋め込んだGaN-LEDを評価し、Euドープによるバンドギャップ減少による電荷閉じ込めにより赤色発光効率が増大することを見出した。 課題4(Nano-LTEMの開発とナノ領域ダイナミクス分析)については、微小テラヘルツ波検出チップを従来のLTEMに組み込み、微小点光源からのテラヘルツ波放射特性を調べ、従来では困難であった、レーザービーム径を用いて、Siウェファーの評価が可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1については、まず、ナノチューブ半導体における光テラヘルツ波変換を科学し、ナノチューブが配列してる場合とランダムの場合を比較し、配列ナノチューブ内での弾道的な電荷ダイナミクスを明らかにした。その成果は、Nano Letters 23 (10), 4448(2023)に論文発表した。次いで、放射テラヘルツを観測することで、MIS構造におけるフラットバンド電圧の非接触評価が可能であることを理論的に示した。 課題2については、グラフェン/Siヘテロ接合に適用し、大規模イメージングへの応用可能であることを示し、Materials 17, 1497(2024)に論文発表した。 課題3については、2光子PLとLTEMを組み合わせる準備が整った。来年度ヘテロ接合評価を試みる予定である。また、埋め込みGaN/Eu-GaN超格子の評価を行い、Euドープによるバンドギャップの減少による電荷閉じ込めにより赤色発光効率が増大すること見出し、Commun. Mater. 4, 100 (2023). に論文発表した。 課題4については、微小テラヘルツ波検出チップを組み込んだLTEMが完成し、様々な場合に適用してその半導体分析応用の可能性を調べる準備をし、その技術を課題2に適用し、グラフェンのイメージングに成功した。発表論文は課題2と同じ。
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今後の研究の推進方策 |
課題1、2、3の共通の課題として、Siウェファー中に埋め込まれたpn接合における、光テラヘルツ波変換の理論を構築し、実際のSiウェファーを用いて埋め込みpnを評価し、抽出できる物性値を明らかにすることに取り組み始めている。 課題2については、pn接合以外にもワイドギャップ半導体のヘテロ接合について、LTEMの材料評価への応用可能性について明らかにする予定で、現在ZnO/GaNについて検討中である。 課題3については、pn接合の深さ方向分析について調べ、さらに2光子PLとLTEMを組み合わせて、ワイドギャップ半導体の評価を試みる。 課題4については、現在のSiウェファー上のイメージング応用を実践するとともに、更なる高分解能化を目指し、カンチレバー付きLTEM構築を目指す予定である。
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