研究課題/領域番号 |
23H00224
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
幅崎 浩樹 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50208568)
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研究分担者 |
北野 翔 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (50736840)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | アルカリ水電解 / アノード酸化膜 / 酸素発生反応 / FeNi合金 / その場観察 |
研究実績の概要 |
金属のアノード酸化法は、金属・合金上に多孔質酸化膜を簡便に形成できる優れた手法であり、アルミニウムなどでは工業的に広く使われている。研究代表者らは、このアノード酸化法をFeNi系合金に適応した場合、アルカリ水電解用酸素発生電極としての活性および耐久性が大幅に改善されることを見出している。本研究ではその活性化の機構の解明と高活性電極の設計指針の確立を目指すものである。 本年度は実用FeNi合金であるFe-54 mass% Co-17 mass% Ni合金(Kovar合金)、Fe-45 mass%Ni合金(45 Permalloy合金)、Fe-42 mass% Ni(42Invar合金)、Fe-78 mass% Ni(78 Permalloy合金)を試料としてアノード酸化をフッ化物含有エチレングリコール溶液中において行い、そのアノード酸化膜の解析を進めるとともにOER特性を評価し、Kovar合金が最も優れた酸素発生反応(OER)活性を示すことを確認した。 さらに、そのアノード酸化後のKOH水溶液中にお行ける酸化膜の構造変化をその場観察するために、in situ Raman測定法の確立を行った。その場観察用に自作の電気化学セルを開発し、in situ Raman測定が可能な環境を確立した。また、予備測定から、アノード酸化で生成したフッ化物相がKOH浸漬に伴い、オキシ水酸化物とスピネル酸化物の混合層へと変化し、このスピネス酸化物相は酸素発生する貴な電位域では消失することが明らかとなった。 また、高活性相と推定されるオキシ水酸化物の結晶性がOERにどのように影響するかを明らかにするために、水熱処理による高結晶性相の形成の試みに着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、フッ化物含有エチレングリコール電解液中において生成するフッ化物相がKOH水溶液中でどのように高OER活性相へ変化していくことを明らかにすることが重要である。本年度はin situ Raman測定法により構造変化をとらえる手法の確立に注力したが、その測定法の確立に成功し、実際にアノード酸化膜中の物質のKOH浸漬および電位の変化に応じて構造が変化することをとらえることができた。また、水熱処理によるフッ化物層の改質にも着手でき、おおむね順調に研究は進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、in situ Raman測定を各種合金に適用し、アノード酸化膜の構造変化を明らかにする。特にOERよりも卑な電位でみられるレドックスピークに伴う構造変化を明らかにするとともに、多孔質層の厚さを変えて、多孔質層全体がレドックス活性、OER活性なのかも明らかにする検討を行う。 また、電極表面積はOER活性に大きく影響する。昨年度導入した高感度ガス吸着装置を用いて各種試料の比表面積を高精度で求めるとともに、電気化学表面積との比較を行い、電気化学的に活性な表面積と多孔質膜の厚さとの関係などを明らかにし、OER活性な電極を得るためのアノード酸化条件の最適化のための制御要因を明らかにする。 さらに、水熱処理法の条件検討をさらに行い、高結晶性のオキシ水酸化物の形成手法の確立を目指す。
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