研究課題/領域番号 |
23H00229
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古原 忠 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50221560)
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研究分担者 |
宮本 吾郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60451621)
榎木 勝徳 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 准教授 (60622595)
大谷 博司 公益財団法人豊田理化学研究所, フェロー事業部門, フェロー (70176923)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 粒界偏析 / 脆化 / 鉄鋼材料 / 相変態 / 動的偏析 |
研究実績の概要 |
本研究は、強度-延靱性を決定する粒界や相界面における溶質元素の偏析に着目して、実験的定量評価と界面偏析構造の理論的評価の双方を行うとともに、界面偏析がもたらす材料特性の変化との相関を解明することで、鉄鋼の高強度化を阻む相界面の脆化および破壊を克服する先進的材料設計原理を確立することを目的とする。本年度では、以下の内容で研究を実施した。 [1] C粒界偏析の実験的解明 - 純Fe材の浸炭処理で作製したFe-C二元合金を長時間焼鈍してCを粒界に静的偏析させた。EBSDとFIBを用いて粒界方位差と面測定に基づき粒界性格を評価したうえ、異なる粒界におけるC偏析量を三次元アトムプローブにより測定した。Σ3(111)などの対応粒界よりも、ランダム粒界におけるC偏析量が高いことを確認した。 [2] 界面構造とC粒界偏析の理論計算 ー 分子静力学法によりΣ3(111)などの対応粒界モデルを作製し、パーシステントホモロジー法を用いて粒界における空隙多面体ユニットを抽出し、第一原理計算により各種多面体におけるCの偏析エネルギーを評価した。粒界空隙ユニットのトポロジー情報は、その周囲のFe原子の過剰エネルギーおよびCの粒界偏析エネルギーと良い相関があることが明らかとなった。 [3] 溶質元素の動的偏析挙動の実験調査 ー 本年度で導入した急冷熱膨張率測定装置を利用して、各合金を高温のオーステナイト域に加熱した後に、種々の速度で冷却して変態開始と終了温度ならびに変態速度を測定し、動的偏析の実験調査に適した条件を明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、実験と理論の両面から粒界構造と偏析挙動の関係について解析手法を確立したこと、またCの粒界偏析におよぼす粒界性格の影響を明らかにしたこと、さらに予備実験により次年度以降の研究対象となる動的偏析の実験調査が可能であると確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
[1] 不純物元素の動的偏析の実験調査 ー 旧オーステナイト粒界やパケット、ブロック境界など、様々な粒界を含めマルテンサイト組織を研究対象とする。PやBなどの不純物元素を含有した低炭素鋼マルテンサイトを共析温度以下で各時間の焼戻し処理を行い、EBSDとFIBにより各種界面の界面性格を確認したうえ、三次元アトムプローブにより各溶質元素の動的偏析挙動を評価する。 [2] 不純物元素の粒界偏析の理論計算 ー 実験調査に加え、本年度で確立した分子静力学と第一原理計算を組み合わせた手法により、マルテンサイト組織における各種境界の粒界構造と不純物元素の粒界偏析エネルギーを評価する。 [3] 機械的特性の評価手法の確立 ー 上記の実験調査で用いた焼戻しマルテンサイト鋼について、マイクロ衝撃試験の予備実験を行い、不純物元素の粒界偏析と材料の機械的特性の相関解明に向けて評価手法を確立する。
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