研究課題/領域番号 |
23H00243
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北川 尚美 東北大学, 工学研究科, 教授 (00261503)
|
研究分担者 |
高橋 厚 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60357366)
廣森 浩祐 東北大学, 工学研究科, 助教 (80828062)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | イオン交換樹脂触媒 / エステル合成 / 反応分離 / 数値モデル |
研究実績の概要 |
代表者らは、多孔性の陽イオン交換樹脂を触媒として脂肪酸とアルコールのエステル合成を行うと、反応場となる固相(樹脂骨格)上から副生水が速やかに除去され、反応に関与しない形で樹脂に保持されることで、平衡制約なしに完全転化率を達成することを見出した。本研究では、この多孔性樹脂内で特異的に生じる反応分離装置様な現象を解き明かし、それに基づく統合型数理モデルを構築、モデル定数を樹脂性状や反応物性状と相関づけることで、様々な反応系で平衡制約から解放されるプロセスを設計可能な学理を体系化する。 研究項目としては、副生水の動きと、固相内細孔(網目構造が膨潤したミクロポア)を中心とする相関物質移動に注目し、1)固相内細孔における相間物質移動メカニズムの解明、2)樹脂内液相における相間物質移動メカニズムの解明、3)固相における相間移動を伴う触媒反応メカニズムの解明、に取り組む 本年度は、項目1)に取り組み、固相の活性基上で副生した水が①交換基のイオン和と②固相内細孔への移動、どちらが優先的に生じるか、その支配因子は何かを明らかにすることを目指した。脂肪酸(FA)とメタノール(MeOH)のエステル化を対象とし、炭素数の異なるFA試薬を用い、モル比MeOH/FAを1-10と変化させて回分実験を行った。エステル化完了後のバルク液相の成分濃度を測定し、樹脂相と液相間の水の分配係数を求め、液相の水重量分率に対してプロットした。その結果、FA種によらず両者間に相関関係があることが分かった。また、実際の植物4種の脂肪酸(混合物)を用いて同様の検討を行ったところ、若干のばらつきがあるものの、同じ相関式を用いて表現できることが分かった。副生水の分配が液相のMeOH重量濃度に依存し、それが高くつまり表面張力が弱くなると、水が細孔から液相に移動するため、①イオン和よりも②細孔への移動が優先的であると結論づけられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とした「固相の活性基上で副生した水が①交換基のイオン和と②固相内細孔への移動、どちらが優先的に生じるか、その支配因子は何か」を実験的に明らかにすることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の結果に基づき、現象の数理モデル化を進めていくと共に、項目2)の樹脂内液相を形成する物理的な細孔(マクロポア)の役割を明らかにするため、各成分の相間物質移動メカニズムの解明に取り組む。樹脂メーカーによると、マクロポアはよりサイズの大きな分子の取込みを可能とする、網目構造の膨潤による体積増加率を高める、体積変化による物理的な損傷を抑制する、という機能を持つとのことである。そこで、実際に同じ架橋度を持ち、マクロポアを持たないゲル型樹脂を用いて、各成分の取込み現象を対象に実験と理論の両面から解析を行うことで、樹脂内液相の役割を明らかにする。ここでは、乾燥させた樹脂を用いて、含水量を変化させたアルコール溶液に対する分配実験を行い、溶液極性に応じて樹脂が取り込む水量の測定を行う。架橋度の違いやマクロポアの有無の影響を把握することで、相間物質移動のメカニズムを捉えていく。
|