研究課題/領域番号 |
23H00280
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 英一 名古屋大学, 博物館, 教授 (30324403)
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研究分担者 |
望月 陽人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 幌延深地層研究センター, 研究職 (00783721)
淺原 良浩 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10281065)
勝田 長貴 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377985)
山本 鋼志 名古屋大学, 博物館, 特任教授 (70183689)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | コンクリーション化 / 中性化 / 固定 / 掘削ズリ |
研究実績の概要 |
トンネルなどの岩盤掘削土の中には,地表に保存することで大気や雨水との反応により酸性化し,硫酸の他にヒ素などの有害重金属を放出するものが少なくない.このような酸性土の処理・再利用問題は全国各地で発生しているのが実状である.本研究は,酸性化する掘削残土による地表および地下環境の汚染リスクを低減させることを目的に,球状コンクリーションの形成メカニズムを応用・開発したアルカリイオンを放出するコンクリーション化剤を活用し,掘削土の中性化とコンクリーション化(固化)のための基礎試験と地下環境での実証実験を行い,掘削残土の中性化・無害化および再利用技術を開発することにある. 本年度は,上記目的の元,室内試験でのコンクリーション化剤を用いた中和・固定実証試験を開始した.実験期間は数ヶ月とまだ短いものの,当初想定したよりも短い期間でコンクリーション化剤によるpH中和効果と炭酸カルシウムの沈殿に伴う固定効果が現れてきた.特に,パウダー化させたコンクリーション化剤と掘削残土の混合実験では,中性化および炭酸カルシウムによる固定化が明確に判断され,コンクリーション化剤による効果が明らかとなった.特に、掘削ズリとコンクリーション化剤との反応によって、ズリ同士の隙間にカルサイト(炭酸カルシウム)の沈殿・結晶の成長が確認できた。このことは、コンクリーション化によるシーリング、pH中が順調に生じていることを示しており、所期の期待する結果を得ることができている。 今後は、これらの実験を継続するとともに,固定化したズリ内部の化学分析などを実施していく予定である.また,実際の現場での適用性試験を検討しており、その手法や実施期間についての検討に入る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内実験として,掘削残土を顆粒化し,それにパウダー化させたコンクリーション化剤を混ぜ,地下研から採取した地下水と反応させ,経過時間ごとにpHおよび地下水の成分(特にカルシウム)を分析し,反応開始後の中和状態および主成分の時間変化を測定した.また実験期間は数ヶ月から一年程度とし,実験後は,反応させた掘削残土を取り出し,岩石薄片や電子顕微鏡,エックス線顕微鏡等で,炭酸カルシウムの生成状態,分布,量などを確認し,コンクリーション化状態などの解析を実施し,おおよそ目的に沿った結果が得られていることが理由である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,規模を拡大して実験あるいは実際の掘削ズリ置き場での実験を行う予定である.実験方法は,掘削ズリ置き場に約1m四方サイズでのピットを掘り,その部分でパウダー化したコンクリーション化剤と掘削ズリを混ぜ,天水及び地下水と反応させて,中和反応とコンクリーション化を経過時間ごとにモニターし,その変化と効果を確認する.現場での実験を行うことで,室内試験結果との現象の違いや反応速度の違いなどが生じるかどうかを確認する.また,反応速度の定量化についても,現場に即した形での修正を行う.
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