研究課題
神経細胞は、シナプスやランビエ絞輪など多様な細胞膜ドメインを発達させ、安定かつ可塑的な神経伝達を遂行する。近年の超解像顕微鏡観察により、シナプス前部と後部の機能タンパク質群はそれぞれナノドメインに集積し、両者が精緻に整列して機能するナノカラムの存在が推測された。私共は、ナノカラムを構成する超分子複合体 LGI1-ADAM22-PSD-95を見出した(Fukata Y, Fukata M et al. J Neurosci 2024, 記念総説) 。しかし、ナノカラムの土台となるナノドメインが形成、再編、維持されるメカニズムは未だ不明である。また、オリゴデンドロサイトと神経軸索の接触部位周辺に形成されるパラノードや傍パラノードにおいてもナノスケールの構造が報告され始めたが、詳細な分子基盤は不明である。本研究では、(1)LGI1-ADAM22リガンド-受容体ファミリーと、(2)PSD-95足場タンパク質の局在を制御するパルミトイル化脂質修飾を起点として、ナノドメイン構築機構を明らかにし、(3)LGI1自己抗体を活用して、ナノ構築の破綻と脳病態の関連性を解明することを目的とした。2023年度は、知的発達症との関連が示唆されているLGI3がオリゴデンドロサイトから分泌され、神経軸索上の傍バラノードにおいてナノドメインを形成することを見出した。また、脳内LGI3タンパク質の相互作用分子を網羅的・定量的に探索し、ADAM23とKv1チャネルを同定した。さらに、LGI3 ノックアウトマウスの脳組織において、傍パラノードにおけるADAM23とKv1チャネルが激減し、シナプス短期可塑性が阻害されることを見出した(Miyazaki et al. Cell Rep 2024)。
2: おおむね順調に進展している
LGI1-ADAM22ファミリーに属するLGI3-ADAM23複合体が傍パラノードにおいて、ナノドメインを形成し、神経伝導を制御することを見出した。また、パルミトイル化研究およびナノ病態研究も順調に進展している。
(1) LGI-ADAM-MAGUKシステムによるナノドメインの構築機構の解明: 2023年度に引き続き、LGI1-ADAM22-PSD-95複合体が形成するシナプス-ナノドメインとナノカラムの構築機構、およびその破綻による病態機構を明らかにしていく。(2) パルミトイル化サイクルによるナノドメインの動的制御機構の解明: PSD-95のパルミトイル化サイクルを遮断した変異体を発現させた神経細胞における「シナプス-ナノ構築の変容」を明らかにしていく。(3) シナプス-ナノ病態モデルマウスによる脳病態機構の解明: 自己免疫性辺縁系脳炎患者由来のLGI1自己抗体を活用して、シナプス-ナノ病態の解明を進める。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Cell Reports
巻: 43 ページ: 113634~113634
10.1016/j.celrep.2023.113634
Journal of Neuroscience
巻: - ページ: in press
Brain Communications
巻: 5 ページ: fcad295
10.1093/braincomms/fcad295
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/neuropharmacology/fukata/
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Cel_240109.pdf