研究課題/領域番号 |
23H00391
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中島 欽一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80302892)
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研究分担者 |
城村 由和 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (40616322)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | レット症候群 / レトロトランスポゾン / 逆転写酵素阻害剤 / 老化 |
研究実績の概要 |
加齢に伴い脳の老化、すなわち脳機能の低下が進行する。この原因として神経細胞(ニューロン)の機能や学習・記憶に重要な海馬におけるニューロン新生能力の低下が考えられるが、老化がこのような機能低下を引き起こすメカニズムは不明である。一方で、発達障害を含む多くの神経疾患脳で実は、細胞老化や炎症の亢進が観察されている。我々はこれまでに、マルチオミックス解析によりエピジェネティックな神経系細胞機能制御機構及び老化細胞の誘導・維持機構を明らかにしてきた。その過程で、老化細胞ではレトロトランスポゾンの発現が増加し、そのゲノム内転移ではなく逆転写で産生されたcDNAが、細胞間相互作用を媒介し脳内炎症を惹起する可能性を見出している。また、世界初に老化細胞を生体内にて1細胞レベルで検出・解析できるマウスも作製した。そこで本研究ではこれらの知見・技術・材料を駆使し、老齢及び神経疾患脳内でどの細胞種がどのようなエピゲノム状態を取ることで老化状態に陥り、脳内炎症が誘発され脳機能低下に至るのか、その普遍的原理を明らかにし、逆転写酵素阻害剤の投与でレトロトランスポゾンのcDNA合成を阻害し、脳機能低下が改善できるかどうかを検討することを目的とした。 本年度は、MeCP2欠損マウスと老化細胞を生体内にて1細胞レベルで検出・解析できるマウス(p16-CreERT2-tdTomatoマウス)を交配し、MeCP2欠損によりニューロンでtdTomato陽性老化細胞様細胞が増加していることがわかった。さらにcDNAシグナル伝達を止めるようなTLR9欠損マウスとの交配、逆転写酵素阻害剤投与によりMeCP2欠損マウスのレット症候群様病態の改善や寿命延伸が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題進展の必須のマウスの作出や薬剤の投与により、我々の仮説を指示するデータが蓄積しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、MeCP2欠損あるいは野生型p16-CreERT2-tdTomatoマウス脳における1細胞RNA-seq等による、分子生物学的解析を行う。また、L1の発現を特異的に誘導、あるいは減弱させるコンストラクトの作製とその効果を検討する。更に、ヒトレット患者iPS細胞由来脳オルガノイドを用いた解析に着手する。
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