研究実績の概要 |
本研究では、免疫応答や免疫細胞分化の転写後制御機構を、mRNA上の免疫暗号の観点から解明することを目標としている。これまで、RNA分解酵素であるRegnase-1が免疫細胞活性化のブレーキとして機能し自己免疫疾患の発症を抑制していることを報告してきた。しかし、Regnase-1には4つのファミリー分子が存在するがそれらの機能は明らかでなかった。そこで、Regnaseファミリー分子の中でもRegnase-1と発現パターンの類似したRegnase-3について検討を加えた。Regnase-3単独の欠損マウスは特に表現型を示さなかったが、Regnase-1,-3を重欠損させることで、リンパ球分化の重篤な障害と骨髄球系細胞の増加が起こる事を見出した。1細胞RNA-seq解析の結果、造血幹前駆細胞(HSPC)において、リンパ球・骨髄球系へのプライミングがRegnase-1,-3により制御されていることが明らかとなった。その分子機構を解析した結果、まず、CLIP解析によりRegnase-1,-3が共通したmRNAステムループ構造を認識する事、HSPCにおいてRegnase-1,-3欠損下に発現亢進するmRNAのうち、Nfkbiz遺伝子がその機能に必須である事を見出した。NfkbizはATAC-Seq解析の結果、HSPCにおいてエピジェネティック制御を通じて分化のプライミングを誘導していることが示唆された。また、Nfkbiz 3'非翻訳領域の解析の結果、Regnase-1,-3による制御に重要なステムループ構造を見出し、その構造を阻害するアンチセンスオリゴ核酸がNfkbiz発現を増加させ骨髄球系細胞分化を亢進させることを見出した。このように、Regnaseファミリー分子の解析を通じ、新たな免疫細胞の機構を明らかにした。
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