本年度は、以下の5項目に対して、主にマウスモデルの作製に注力して研究を実施する予定であった。 (1)生体内エンハンサーリプログラミング技術の開発:細胞種特異的に初期化因子をON/OFF可能なマウスを作製する。 (2)エンハンサーリプログラミングによる腫瘍内免疫応答制御:腫瘍環境において遺伝子再構成による獲得免疫とは区別される免疫応答記憶 の存在が注目されている。またマクロファージに代表されるようにエピゲノム制御による免疫細胞の分化が免疫応答に重要な役割を果たしてい る。腫瘍内免疫応答への介入を目標として、免疫細胞全体およびマクロファージ特異的にOSKMを制御可能なマウスを作製する。 (3)エンハンサーリプログラミングによる腫瘍内線維芽細胞制御:近年、cancer-associated fibroblasts (CAF)に代表される線維芽細胞がが ん細胞の増殖、悪性化に関与していることが明らかとなりつつある。腫瘍環境内において線維芽細胞に対して一過性のOSKM遺伝子発現を誘導し 、エンハンサーリプログラミングを試みる。 (4)エンハンサーリプログラミングによるがん実質細胞への評価検討:がん実質細胞に対するエンハンサーリプログラミングについても検討 する。がん細胞特異的にOSKMを短期間発現誘導し、エンハンサー活性の変化を解析する。エンハンサー活性抑制後の細胞増殖活性、造腫瘍能、 浸潤・転移能を評価する。 (5)ウイルスベクターを用いたエンハンサーリプログラミング技術の開発:遺伝子改変マウスを活用したOSKM遺伝子誘導に加えて、AAVなどの ウイルスベクターを用いた初期化因子の誘導方法についても検討する。 基盤Sに採択され、12日間で研究が終了となったため、基盤Sの研究に引き継ぐこととした。
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