研究課題
SBMAにおける細胞タイプ特異的な時間的遺伝子発現を明らかにするために、SBMAマウスモデル(AR-97Q)の脊髄を対象にシングルセルRNAシーケンシングを行った。すべての細胞タイプの中で、オリゴデンドロサイトが疾患発症前(3週齢)に最も多くの発現変化遺伝子を示した。クラスター解析により、Naチャネルやシナプス機能に関連する経路が疾患発症前に活性化されており、AR-97Qマウスでは野生型マウスに比べてオリゴデンドロサイトからニューロンへの出力が増加していることが示唆された。これらの初期段階での変化は、進行期には消失した。SBMAのオリゴデンドロサイトモデルでは、シナプス構造の転写変化の増加など、初期段階のAR-97Qマウスと類似した表現型がみられた。また、AR-97QマウスのオリゴデンドロサイトにおけるCaイメージングにより、Ca応答の増加が明らかになった。ラット初代オリゴデンドロサイトとニューロンの共培養系では、オリゴデンドロサイトにおける変異ARがニューロンの活動性および同期性に影響を与えることが示された。以上より、細胞間コミュニケーションの破綻がSBMA初期病態において重要な役割を果たしていることが示された。ALSについては、前頭側頭型認知症(FTD3)の原因となるCHMP2Bに注目した解析を行った。CHMP2BのC末切断変異は、後期エンドソーム(LE)とリソソームの融合を阻害するが、FTD3ではTDP-43の病理は誘導されない。本研究では、CHMP2B変異によって引き起こされるLE機能障害が、TDP-43の凝集体を核近傍の品質管理コンパートメントへと効率的に動員することで、その分解を促進することを示した。トランスクリプトーム解析により、CHMP2B intron5の過剰発現がHSP70の発現を上昇させることも明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
SBMAについては、当初の目的であったSBMAマウスモデル脊髄のシングルセル解析を完了し、その成果を論文発表できた(Iida et al. JCI Insight. in press)。ALSについては、予定通りneurexin 1を胎児期あるいは発症前にモデルマウス脳にAAVで導入することにより、オリゴデンドロサイトの遺伝子発現異常やニューロン変性が抑制されることを明らかにすることができた。さらに、エンドソームの異常がTDP-43の凝集を抑制するという新奇の知見を得ることができた(Iguchi et al. Neurochem Int. in press)。
SBMAについては、マウス脊髄からMACSで抽出したアストロサイトのRNAseqを行い、シングルセル解析と類似の変化がみられるか解析する。両解析で共通して抽出された遺伝子をSBMA 細胞モデルにおいてレンチウイルスを用いて強制発現もしくはノックダウンを行った上で細胞の viability や表現型 、細胞の活動量 などを 解析 し、病態への関与を検討する。また、SBMA患者剖検脊髄を用いたシングルセル解析を行い、ヒト病態におけるオリゴデンドロサイトの変化を検証する。ALSについては、胎児脳ストレスと運動ニューロン変性の関係を明らかにするため、妊娠ALSマウスにL-NAMEなどの薬剤を投与することにより胎児虚血負荷を与え、神経病理学的解析を行うとともに、RNAseq・メタボロームの多層オミックス解析により病態進行に関わる分子を同定する。
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Neurochem Int
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JCI Insight.