本研究では、この筋シナジーによって生じる、手指からの感覚フィードバック信号を新たに「感覚シナジー」として捉え、サルを対象にして「感覚シナジー」の神経実体、回路構築、形成様式を解明する事を目的としていた。ここでは、本課題が採択され研究を開始した2023年4月1日から、同年4月末廃止までの1ヶ月の研究成果を報告する。この期間には主として、延髄及び脊髄への電極埋め込み方法の確立を目指した実験を行った。延髄においては、当初研究計画では最終的に128チャンネルの同時記録を行う計画であったが、この期間においてはこれまで開発してきた8チャンネル電極記録を継続し、その安定性を検証するとともに、16チャンネル電極の選定を行った。脊髄記録では、多極ブラシ電極(128ch)、及びNeuropixels電極(384ch)を用いる予定であったが、この期間では昨年度から継続して行っていた齧歯類を対象とした実験において、麻酔下の個体で手指運動を受動的に行わせた際の超多チャンネル活動記録技術の確立を目指した実験を継続していた。さらに、運動出力の評価に必要なspike triggered averagingをより多くの筋で行うために、新たな筋電図記録系の導入を行った。これらの研究成果は、新規に採択された基盤(S)研究に引き継がれ、引き続き「筋シナジー」と「感覚シナジー」の統合による新たな運動制御理論の構築を目指した研究を遂行してゆく予定である。
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