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2023 年度 実績報告書

生態系における「病原体循環」の理論・実証・応用

研究課題

研究課題/領域番号 23H00532
研究機関京都大学

研究代表者

佐藤 拓哉  京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30456743)

研究分担者 渡辺 勝敏  京都大学, 理学研究科, 教授 (00324955)
森 健介  京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (50902623)
片平 浩孝  麻布大学, 生命・環境科学部, 講師 (70722651)
瀧本 岳  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90453852)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード病原体循環 / ハリガネムシ / エキノコックス / フェノロジー / 森林-河川生態系
研究実績の概要

鳥インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、デング熱や結核などの新興・再興感染症の制御が世界的な課題となっている。こうした感染症の約60%は、自然生態系を循環する病原体がヒトにスピルオーバー(漏出)した人獣共通感染症である。しかし、生態系での病原体の動態は謎に包まれており、これを定量化し予測する枠組みの構築が求められている。本研究では、生態系における病原体の流れを「病原体循環」とみなし、数理疫学モデルによる定量分析を可能にすることで、感染症管理への応用を開拓する。申請者らは、森と川の生態系を循環する病原体(寄生虫ハリガネムシ類)の長期感染動態データを蓄積しており、ハリガネムシ類の衰退と再興のダイナミクスが見えてきている。そこで、ハリガネムシ類の「病原体循環」を定量分析し、その衰退・再興ダイナミクスの駆動因を解明しようとしている。また、日本でも感染拡大が懸念されているエキノコックス症(人獣共通感染症)の「病原体循環」を定量化し、スピルオーバーのリスク評価や駆除戦略の効果予測への応用を試みている。
本年度は、ハリガネムシ類の宿主の種群レベルのフェノロジーを定量し、中間宿主と終宿主の季節的なミスマッチが感染機会の喪失につながることを示した。この観測データを数理モデルに統合し、宿主種群間の季節的ミスマッチがハリガネムシ類の個体数を抑制する要因になることを示した。一方、この数理解析からは、宿主のフェノロジーに年変動がある場合には、宿主のフェノロジーに種多様性が、感染動態を安定化する効果をもつことも明らかになってきた。これは、病原体循環の理解において、宿主種群のフェノロジーに注目することの重要性を示す先駆的な成果であり、現在論文化を進めている。また、エキノコックス症については、野外での感染評価に環境DNA分析を適用する枠組みの検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ハリガネムシ類については、すでに病原体循環の枠組み構築に資する定量データを取得し、基本となる数理モデル構築を進めた。さらに、その論文化も進めている。
これらの成果に基づき、病原体循環に関するよりリアリスティックな数理モデル構築の道が拓けつつある。
一方、エキノコックス症についての病原体循環を記述する枠組み構築はまだ検討中であるが、そのために必要な宿主多様性の評価方法、環境中からエキノコックスを検知する環境DNA分析手法などの確立を推進した。

今後の研究の推進方策

初年度の成果に加えて、病原体循環を推定するために必要な宿主の摂餌生態やハリガネムシの繁殖率等に関する各種生活史パラメータを取得する予定である。これらの観測データを充実させることで、ハリガネムシが有する潜在的に多様な感染経路をリアリスティックに数理モデルに取り入れることが可能になると期待される。
エキノコックス症については、初年度から確立しつつある各種観測手法を用いて、モデルとなる調査地を設定し、実際にデータ取得と数理モデル構築を推進する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Ecological communities and parasite transmission in seasonal environments2023

    • 著者名/発表者名
      Takuya Sato
    • 学会等名
      International Conference on Modelling Pest Distribution and Monitoring Strategies for Global Crop Protection
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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