研究課題/領域番号 |
23H00547
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
仲上 豪二朗 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (70547827)
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研究分担者 |
真田 弘美 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (50143920)
小嶋 良輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (10808059)
酒井 崇匡 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70456151)
野村 征太郎 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10722118)
峰松 健夫 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (00398752)
秋下 雅弘 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00261975)
佐久間 一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50178597)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 看護理工学 / 難治性創傷 |
研究実績の概要 |
近年、創部の細胞老化が慢性炎症を誘導し、創傷の難治化を引き起こしていることが報告されているが、創部の細胞老化は通常機構として創傷治癒に不可欠であり、創部の老化細胞をすべて除去することは創傷治癒を阻害する。そこで、滲出液中に豊富に含まれる炎症性タンパク質と細胞老化によって誘発される細胞老化関連分泌現象(SASP)因子が一致することに着目した。 難治性創傷の滲出液中で細胞老化が生じているかを確認するため、創傷被覆材から生細胞を回収し、細胞老化やSASPに関連する遺伝子発現を解析した。滲出液中の老化細胞の特徴を示すための横断的解析として、年齢などの患者特性との相関や遺伝子間の発現量の相関を調べた。また、滲出液中の細胞老化関連遺伝子の発現と創傷治癒の関連を明らかにするための縦断的解析として、創面積減少割合と細胞老化遺伝子の発現量の関連を線形混合効果モデルで解析した。 細胞老化を示す遺伝子の発現が確認され、CDKN1Aと年齢の患者の年齢の相関係数は0.527であった。また、SASP因子の遺伝子発現量との間に正の相関を認めた。CDKN1Aの発現量の少なさは、1週間後の創面積減少割合の大きさと有意に関連していた。 続いて、滲出液の老化細胞除去方法を検討するため、in vitro実験に移行した。NIH/3T3細胞に過酸化水素水を曝露させることで細胞老化を誘導した。その後、過酸化水素水によって誘導された老化細胞と通常細胞を混ぜる割合を条件を設定し、スクラッチアッセイを実施したところ、老化細胞を割合が増えることでスクラッチ部分の閉鎖が遅延することを確認した。これにより、過酸化水素水による老化細胞の治癒遅延モデルを確立した。このモデルでの老化細胞では、老化関連の遺伝子発現が有意に上昇することを確認しており、現在、それをターゲットにする中和抗体による細胞老化除去の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
滲出液中の老化細胞の存在が創傷治癒遅延を引き起こしていることを臨床研究により見出し、その除去が創傷の難治化を抑制する可能性を示すことができたことから、本研究のコンセプトの根幹を確認できた。また、老化細胞の割合をコントロールすることで創傷治癒遅延を簡便に模倣できる実験系を確立できたため、次年度より老化細胞除去方法のスクリーニングに供することが可能となった。以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立した系を基に、老化細胞を効率的かつ安全に除去する方法の探索に取り組む。
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