【研究目的】園庭整備の一環として設計者や保護者等と協働改修された全国的に珍しい「登はん型遊具」を対象とした令和2年度の研究(JSPS科研費JP20H00721)と令和3年度の研究(JSPS科研費21H03891)から,リスクテイキング能力の育成との関連や保育者の援助の背景等を明らかにしてきた。令和3年度の研究から,保育者は幼児一人一人の取組や心情を捉え,幼児に応じた意図により援助内容を判断していることが示されたが,幼児一人一人の取組の詳細は明らかでない。よって本研究では幼児の多様な挑戦過程を捉えるため,幼児の取組状況の時間的変化に着目した行動観察から,幼児の取組状況の変化や影響要因について明らかにし,安全上の配慮の具体的内容を検討することを目的とした。
【研究方法】国立A幼稚園の登はん型遊具に取組む4歳男児2名(達成児A,挑戦児B)を対象に,カメラ等で撮影した映像視聴による間接観察を行った。9~3月の調査期間のうち調査対象児の取組が得られた5日間(9月3日間,3月2日間)を分析対象とし,9月と3月の「取組状況」「取組時間」を比較した。また,5日間のエピソードを抽出し,エピソード内の行動をカテゴリー化した。
【研究成果】取組状況及び登り場面の平均取組時間の比較から,達成児A・挑戦児B共に9月より3月の方が取組む登り口の種類が増え,1つの登り口に長時間取組む姿からより確実かつ素早く登り降りできる登り口に取組む姿に変化することが明らかになった。行動カテゴリーから得た特徴的な姿として,9月はA児・B児共に他児の取組を見て試行錯誤し,自分の取組に集中していたが,3月になるとA児は3歳児に登り方を教える姿,B児は保育者に登り降りを披露する姿に変化していた。影響要因としてA児とB児の関係性が考察され,幼児同士の試行錯誤や相互作用を見守る保育者の間接的援助及び環境構成の重要性が示唆された。
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