■研究目的:本研究は、大学組織と利用者(個人)の間に位置する中間集団的なポジションとして「ダイバーシティ推進室」(以下、推進室とする。)を捉え、組織と利用者両方と相互行為を行う主体としての推進室が現在どのような役割を担っているのか、またどのような課題を抱えているのかについて検討する。また、重要なポジションである推進室の実務担当者が非正規雇用である場合も多く、キャリアパスの不透明さが指摘されていることを踏まえて、実務担当者のキャリア形成に推進室の業務がどのように寄与しているかも考察する。
■調査方法:インターネット検索から推進室を有する日本の国公私立大学を抽出し(124校)、各校の実務担当者を対象にオンラインアンケートを実施した(回答数60)。アンケートでは、大学や推進室の規模、教職員に対して行っている取組と課題、学生に対して行っている取組と課題、回答者である実務担当者が感じている課題、実務担当者が推進室の業務で感じているメリット・デメリット等について尋ねた。
■調査結果:国公私立大学共通して、「ワークライフバランス」「女性管理職等の育成支援」「女性研究者数の増加支援」「LGBTQ等の支援」といったジェンダーに関連する取り組みを行っている大学が多いこと、また私立大学では「宗教・民族に関連する支援」「障害・アクセシビリティ支援」「国籍・言語関連の支援」に取り組んでいる割合が高いことが明らかになった。 また本調査で回答した実務担当者の半数が非正規・任期付きの雇用であり、かつ研究者の場合には研究時間が取れない等の困難があることが分かった。一方で、推進室の業務に就いたことで人脈が広がったり、大学組織の運営の実情に明るくなったりといったメリットも感じていることが明らかとなった。
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