本研究は、オーラル・インタープリテーション(OI)とコンテンツ・シャドーイング(CS)のアウトプット・プラクティスに、多読とText-to-Speech(TTS)を用いた自己調整学習の要素を加えた複合的なプラクティスを実践し、スピーキングにおける変容を分析、考察したものである。その上で、スピーキング能力の伸長させ得る知見を整理し、共有することを主たる目的とした。 研究者は、長年に渉る外国語指導と研究活動を通して、現在主流となっている即興のやり取りを中心とした言語活動に対して、題材文の暗唱やスピーチ等の事前準備型のアウトプットが、学習者の発話量、流暢さ、リスニング力の向上に優位な相関を示すのではないかという研究仮説を立て、近年の研究によってその実証を示唆する知見を得た。それらの前提を踏まえ、話す力[やり取り]における「複雑性」「正確性」「流暢性」の質的向上を検証するため、本実験を設定した。実験では、学習者主体による自己調整学習を加え、自律的な学習環境を担保した上で、被験者の行動変容に係る定性的分析も併せて実施した。 研究の具体としては、OIに多読の要素を加えた上での「発話量」「正確性」「複雑性」の検証(A)と、TTSを使ったCSによる「流暢性」の検証(B)の2種の実験を設定し、実証検証を行った。その結果、(A)については「発話量」の上昇が認められた。また、被験者の発話内容をテキスト分析したところ、転換語や従属節の出現頻度が上昇しており、使用する語彙の多様性を示す指標であるTTR(Type/Token Ratio)の変容から、「複雑性」の伸長が示唆された。さらに、「流暢性」を一定時間の発話総量(発話速度)であると定義し、(B)について定量・定性的分析を行ったところ、「流暢性」の向上を示唆する知見が得られた。 本研究の成果は、第55回中国地区英語教育学会にて発表を予定している。
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