本研究の目的は「知的障害特別支援学校高等部における防災教育の視点を踏まえた理科の授業教材の開発」を行うことである。申請者らは知的障害特別支援学校高等部を対象に「理科教育の実態と課題に関する調査」を行った。その結果より、理科授業において多くの学校で、「身の回りのことや生活に関わるものを取り扱う」、「天気、川、土地などの指導に当たっては、災害に関する基礎的な理解が図られるようにしている」ことに配慮して授業づくりを行っていた。特に、災害に関しては生活に関わる身近な内容であり理科との関連も深い。 そこで本研究では、防災教育の視点を踏まえた理科教育の充実を図るための教材開発を行った。理科の見方・考え方を働かせ、非常時に命を守り、安全かつ適切な対応ができる資質・能力の育成を目指す理科の授業教材を作成することとした。 本研究において、教材開発の一つとして「立体ハザードマップ」がある。「洪水ハザードマップ」と呼ばれるものは、その地域の洪水や浸水のリスクは周辺の河川のありかたや土地の高低差に大きく影響されるが、平面的な図面では土地の高低差がわかりにくく、「この場所で危険に際したらどの方向に逃げれば良いのか」といったことを理解しにくい。そこで、立体的な地形図とハザードマップを組み合わせて直感的な理解を助ける教材を開発することを目指し、地形データから複数枚の板を切って張り合わせた模型を製作し、ハザードマップを貼り合わせ立体的なマップを作成した。 本教材を使った実践の結果、平面的な図面よりも立体ハザードマップでの学びにおいて、高さの認識や地形の認識を深められていることがワークシートの記述等から示唆された。またほかの授業実践でも、理科教育と防災教育に関して学びを深める様子が見られた。今後は、生徒の居住地に合わせた学びのカスタマイズや、より具体的なテーマで焦点化して学ぶことも必要もあると考えられる。
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