【研究の目的・計画・方法】 本研究では,準天頂人工衛星“みちびき”から送信されるCLAS信号(補正信号)を擬似的に再現し,自動運転化技術に必要なセンチメーター級の自己位置推定を,教育機関でも導入できるよう安価に実現することを目的とする。現在測量方法として一般化しているRTK-GNSS(RG)測位を援用し,同時にこのRG測位により得られる位置データをみちびきが発するCLAS信号タイプの信号へ変換することにより,あたかもみちびきのシステムによる測位を利用した自動運転のように体感される教習用の自動運転教材を製作する. 【研究成果】 研究計画申請時,人工衛星みちびきの信号を受信するためのアンテナやモジュールが非常に高価であったため,比較的安価なRG測位用の機材を用い,みちびきの測位環境を再現し,シミュレーション環境を構築する計画だった。研究期間中に,RG測位機材と同程度の費用で導入できるみちびき測位用機材が市場に流通し始めたため,教育機関で実用できるか(導入難易度)の検証も同時に実施した。製作物は受信モジュールを用いた回路基板の作製,屋外で使用する際の基板を保護するための筐体を3Dプリンターで作製した。RG測位の検証では,基準点の設定により大きく変動するものの,概ね30cm程度の誤差に収まった。一方,みちびき測位の検証では,アンテナの高さや遮蔽物(木々や建物)の影響も受けるが,概ね50cm程度の誤差となった。費用としては,RG測位・みちびき測位共に10万円程度で導入可能であることが分かった。また,RG測位は基準点・ネットワーク環境が必須であるのに対し,みちびき測位は単体で十分な精度が出せるため,教育機関でも導入しやすく十分実用の範囲であることが検証できた。今後の課題として,更なる精度の向上および,それらの測位データを活用した自動運転教材の実用化を目指す。
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