研究目的:次世代リチウムイオン二次電池として、資源量や蓄電エネルギー密度の点から低分子有機正極材料を使用した有機ナトリウムイオン二次電池が注目されている。申請者はこれまでカルボニル系有機正極材料に着目し、カルボキシ基修飾カーボンナノチューブとの複合化により3.5V級高電位レドックス活性を示すことを見出した。本研究では、元素の局所構造を直接観測可能である固体NMR法を用いることで、有機正極材料の充放電反応機構を明らかにすることを目的とした。 研究方法:有機正極シートは、クロコン酸ナトリウム、カルボキシ基修飾カーボンナノチューブ、結着ポリマーを混合することで作製し、コインセル型ナトリウムイオン二次電池を作製、定電流充放電評価を行った。充放電後のセルをアルゴン雰囲気下グローブボックスで解体し、有機正極シートを回収後、溶媒により洗浄・乾燥処理後、大気非暴露条件でNMR試料管に封入した。充放電前後の有機正極シートの局所構造評価を行うため、23Na固体MAS-NMR測定を行った。 研究成果:カーボン材料との複合化によりクロコン酸有機分子中のナトリウム局所構造に変化があるか評価するため、複合化前後で23Na-MAS-NMR測定を行った。その結果、複合化前後でピーク形状、chemical shiftの変化は確認されず、ナトリウムの局所構造はほぼ変化しないことが示唆された。また、初回充電後の有機電極シートでは23Naピークは検出されず放電後ではピークが検出されたことから、充放電容量に対応したピーク強度の増減が確認された。以上よりクロコン酸ナトリウム有機分子の充放電反応はナトリウムイオンの挿入脱離に起因することが明らかになった。
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