研究課題
1 研究目的:ツメガエルにおいて、外来遺伝子を含むCRISPR反応液と精子核を同時に未受精卵に注入することにより、ゲノムDNAに対する外来遺伝子の挿入(ノックイン)技術を確立する。2 研究方法と成果:(1) 反応条件の至適化:外来遺伝子には緑色蛍光蛋白質を発現するmNeonGreenを、挿入先遺伝子には筋肉で発現するactc1を選び、actc1の開始コドン直下を切断するCas9/gRNAを調製した。actc1にmNeonGreenが挿入されると両遺伝子産物が融合蛋白質として発現するように、actc1の切断部位と相同な配列をmNeonGreenの上流と下流に配置したドナーDNAを調製した。このドナーDNAをCas9/gRNA及び精子核と共にアフリカツメガエルの未受精卵に注入した。その結果、幼生の約5%が筋肉全体に緑色蛍光を発した。それらをシーケンス解析したところ、actc1の片方のアレルではmNeonGreenが上流端はインフレームで、下流端はフレームシフト欠失を起こして挿入されており、もう片方ではフレームシフト欠失のみが生じていた。(2) ノックイン遺伝子座の次世代への継承の確認:(1)により得た幼生を飼育したが、致死となった。これはフレームシフトによりactc1の両アレルから機能的なactc1蛋白質が発現しなかったためと考えられる。(3) 反応条件の普遍性の検討:ネッタイツメガエルを用いて、sox2遺伝子を標的にノックインをおこなった。その結果、神経系で緑色蛍光を発する個体が得られたが、それらも致死となった。3 展望:本研究により、標的遺伝子に高効率で外来遺伝子を挿入できるようになった。しかし挿入の有無に関わらず標的遺伝子に生じるフレームシフトのために、ファウンダーが致死になることがわかった。今後は挿入部位にストップコドン直上を選ぶなど、ヌル変異を避ける工夫が必要である。
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Development, Growth & Differentiation
巻: 65 ページ: 481~497
10.1111/dgd.12884
https://amphibian.hiroshima-u.ac.jp/~oginolab/