神経膠腫は外科的手術による根治が難しく、血液脳関門を通過する薬剤も少なく、薬物療法で使用できる薬剤は多くない。そのため、神経膠腫に対する薬物療法の開発は重要である。そこで研究代表者は、植物由来ナノ粒子を用いた新規神経膠腫治療薬の創薬を目指して検討を行った。いくつかの植物由来ELNsは血液脳関門を通過することが報告されており、神経膠腫に対する新たな創薬材料として期待している。 本研究では先ず、薬用植物、果実、野菜から50種類のナノ粒子を抽出し、ヒトグリオーマ由来U251細胞及びU87細胞に対する細胞増殖抑制作用を評価した。その結果、ニラ(Allium tuberosumの地上部)及び、蒼朮(Atractylodes lanceaの根茎)由来ELNsに強い細胞増殖抑制活性があることを見出した。 また、ELNsはmiRNA等の核酸や有機化合物など複数の成分が封入されており、これらの働きで種々の薬理作用を発揮することが知られている。まず、次世代シーケンサーを用いてナノ粒子中のsmall RNAの発現解析を行ったところ、ニラ由来ナノ粒にはath-miR166g及びath-miR168a-5p、蒼朮由来ナノ粒子にはath-miR166fが多く含まれることが分かった。現在、これらのmiRNAに関する機能解析を進めている。さらに、植物由来ナノ粒子に含まれる成分について、LC-MSによる植物の二次代謝産物のライブラリーを用いたメタボローム解析を行った。その結果、これらのナノ粒子から、二次代謝産物と思われる複数のピークが検出された。特に、蒼朮由来ナノ粒子では、抗炎症作用・抗酸化作用を有する化合物として報告されている7-Methoxycoumarinと相同性の高いピークが検出された。現在、それ以外ピークについても、データの解析を進めている。
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