研究実績の概要 |
抗てんかん薬治療では薬物血中濃度が治療域であったとしても、てんかん発作が生じる場合がある。他方、抗てんかん薬には、傾眠、ふらつき等の副作用があるが、患者によって起こる頻度は様々であり、それらの副作用発現は治療や患者のQOLにも大きく関係してくる。これらの個人差の要因の一つに、抗てんかん薬脳中濃度の個人差が示唆される。しかしながら、臨床研究においては脳中濃度を示した報告は存在せず、血中濃度と脳中濃度の相関関係も未だ解明されていない。そこで、抗てんかん薬脳中濃度の個体間変動とその要因を探索した。京都大学医学部附属病院脳神経外科においてペランパネル服用中に覚醒下脳腫瘍摘出術を受けた患者14例を対象とした。手術中に、患者の血清および摘出脳検体(5-30 mg、腫瘍周辺の正常部など)を採取した。脳検体はホモジナイズしたうえで、血中および脳中抗てんかん薬濃度について、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定した。得られた測定結果を用いて、血中濃度と脳中濃度の相関性及び脳中移行性を評価した。血中及び脳中濃度の相関性評価にはPearsonの相関性解析を用いた。その結果、ペランパネルの実測の血中濃度と脳中濃度は強い正の相関を示した (R=0.826, P<0.001)。また、脳中濃度と血中濃度の比であるKpには大きな個体間変動が確認された。Kpの中央値は0.73 (最小値0.22 - 最大値1.58) であり、血中濃度に比較して脳中濃度が低くなる傾向が確認された。現在、Kpの個体間変動因子について解析を継続している。なお、この成果については第33回日本医療薬学会年会で発表した。
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